【いざという時に】倒産の種類や手続きの流れなどについて解説
新たに設立される法人の数はここ数年増加傾向にありますが、起業した企業のすべてが順調に経営を続けているわけではありません。せっかく起業してもなんらかの形で廃業してしまう会社も多く存在します。
経営者にとって倒産はできれば関わりたくないものだと思いますが、いざという時により良い方法で倒産手続を進めるためにも、知っておくべき知識と言えます。
今回は、倒産種類や手続きの流れなどについて解説していきます。
倒産とは?
倒産とは、会社の資金がなくなってしまい、従業員や取引先への支払いができなくなってしまうことを言います。また、手形の不渡りを続けて出してしまい、銀行からの取引が停止され、経営を続けることが困難な状態は「事実上の倒産」と言われています。
同じような言葉で「破綻」や「廃業」という言葉がありますが、「倒産」と「破綻」「廃業」では意味は異なります。まず廃業についてですが、廃業とは経営者が自主的に会社をたたむことです。会社によっては、黒字であっても経営者の年齢や後継者問題で廃業しています。そして破綻とは、経営が成り立たなくなった状態のことを指します。倒産と同じ意味でも使われますが、倒産の一歩手前でも使われることがあります。倒産よりも少し広い範囲で使われることが多いです。廃業や破綻のように倒産と似ていても、少し異なる言葉も多いので、注意しておきましょう。
倒産にはさまざまな種類がある!?
倒産には返済の負担を減らして会社の再建を目指す「再建型」と全てを精算して会社をなくしてしまう「清算型」の2つがあります。倒産と言うと清算型をイメージされる方も多いと思いますが、例えば、事業自体は将来性があるのに大口の得意先の倒産で資金繰りが悪化したような場合は、会社を清算するよりも事業を継続した方が債権者にとって回収額が増えることが期待されます。このようなケースでは再建型が採られます。
再建型
再建型は会社の財産を全てではなく、一部を処分し、債務を圧縮して負担を減らします。きちんと会社を存続することを認めて、文字通り会社を再建していくことです。そして再建型には、「民事再生」と「会社更生」の2つがあります。
民事再生は、債権者と裁判所に再生計画案を提出して認証を受け、その内容に従って会社を再生していきます。この方法は、会社の財産を全て処分する必要はなく、会社も存続するので経営陣もそのまま経営を続けられます。但し、再生計画案が認められない場合は、破産手続きを取るしかなくなり、会社はなくなってしまいます。会社が黒字になる見込みがないと利用できない制度です。
会社更生は、大きな会社が倒産した際に使われる制度で、会社の継続を目的としている点は民事再生と同じになります。しかし、大きく異なるのが、会社の再建を実施するのは裁判所が決定した管財人なので、経営陣は再建には関わりません。債権者や利害関係に関わる人が多い場合に、会社更生が選択されることが多くなっています。
- 民事再生
- 会社更生
清算型
清算型は、会社の財産を全て精算して、債権者に対して返済するという方法です。全て精算してしまうため、会社はなくなってしまいます。そして清算型には、「破産手続き」と「特別清算手続き」の2つがあります。
破産は会社が倒産したときに、会社の財産全てを精算して、債権者に均等に配当していく手続きです。一般的には弁護士に依頼して破産手続きをします。配当が終われば、会社に残る資産はなくなり、会社もなくなってしまいます。破産手続きが開始できる条件は、「会社が債務を返済できなくなった場合」「会社の総額資産を超えて債務を抱えている場合」のどちらかに当てはまる場合です。
特別清算は、基本的には破産と変わりませんが、大きく違うのが、株式会社しか利用できないことと、会社の財産を現金化して配当する「特別清算人」が専任されることです。また、この特別清算は破産とは違い、債権者の同意が必要になります。利用する会社は株式会社になるので、特別決議で株主の賛成3分の2以上が必要です。特別清算を利用するハードルは高いですが、特別清算人に経営陣を専任できるため、清算を経営陣が進められるメリットがあります。また、破産よりも世間的にイメージが良いため、子会社が倒産した際に親会社のイメージを守るためにも使われます。
- 破産手続き
- 特別清算手続き
倒産の手続きについて
倒産の手続きに目を向けると「私的整理」と「法的整理」に分かれます。簡単に言うと、裁判所などの第3者が間に入るかどうかの違いです。私的整理は、債権者と債務者が直接話し合うことにより倒産手続きを進めます。一方、法的整理では裁判所が介入して関連する法律に則って手続きを進めます。
もう少し詳しく説明すると、私的整理は、裁判所を通さずに倒産の手続きを進めていく方法です。裁判所は関与しないため、決まった形式はありませんが、債権者との協議を重ねて返済や財産の処分について決定していきます。ある程度の進め方については決まっていますが、法的整理よりも柔軟な決定ができます。但し、裁判所を通さないこともあり、法的な強制力はありません。
一方、法的整理は、裁判所を通じて行われる手続きです。「破産法」「会社法」「民事再生法」「会社更生法」の法律に基づいて手続きが進められます。裁判所の管理監督下で手続きが進むため、関係者間の利害調整が比較的スムーズに進みます。しかし、手続きに時間と費用がかかります。したがって、会社規模が大きくなり債権者が多くなると法的整理が適していると言えるでしょう。
清算型の手続きである『破産・特別清算』の流れ
清算型の手続きである破産・特別清算の流れは以下になります。
①弁護士への依頼
弁護士に倒産に関する相談を始めます。事業の継続が困難であると判断したならば、弁護士に依頼をして破産や特別清算の手続きに着手します。
②受任通知を送る
弁護士は倒産手続きの依頼を受けると、債権者に対して受任通知を発送します。以後、弁護士は、依頼者の代理人として、債権者との連絡の窓口となります。
③会社の財産、権利義務の調査
弁護士は、決算書を見たり会社の代表者に聴き取りをしたりしながら、会社の財産の内容を調査します。また、会社に未払いの賃金や買掛金があるか、または未回収の売掛金があるか等、今後会社の財産に変動を生じさせる可能性があるものについて調査をします。更に、会社の事業所の賃貸借契約の状況や、リース契約を締結している什器設備の有無など、会社の権利義務関係の一切を調査します。
④会社財産の保全をする
破産手続を利用するにあたって、会社に残っている財産は基本債権者に配当されることになるのですが、会社の内部の人や債権者などが勝手に財産を処分できないようにしたり、申立てに必要な書類が散逸したりしないようにするために、会社財産の保全をします。具体的には、印鑑・会社の通帳・不動産の権利関係書類・決算書などの書類等、重要なものを弁護士が管理します。
⑤申立書の作成・資料収集
破産や特別清算は、裁判所への申立てにより行います。申立て時には申立書を作成することになり、添付書類と一緒に提出をします。
⑥(特別清算)清算の決議・公告
特別清算をする場合には、まず会社の清算手続きを開始します。具体的には清算決議を行って、官報への公告を行います。
⑦申立て~決定
作成した申立書と添付書類を裁判所に提出をして、申立てを行います。裁判所は、記録をもとに要件を満たしているかを確認して、破産手続き開始決定・特別清算開始の命令を下します。
⑧管財人・清算人が選定され業務を遂行
裁判所から、破産手続・特別清算手続きを指揮する管財人・清算人が選定されます。管財人・清算人は、破産法・会社法の特別清算の章に定められた項目についての調査・債権者への配当等の業務を行い、申立人はこれに協力します。
⑨債権者集会
裁判所において定められた期日に債権者集会を行います。債権者集会では、管財人・清算人が行った調査についての結果が報告され、これに応じて裁判所が必要な決定を行います。管財業務・清算業務が完了していない場合には次の期日が定められます。破産の場合には管財業務が終了したときに、特別清算のときには協定が成立すると終了となります。
⑩手続きの終了と免責
裁判所によって手続きの終了に関する決定が行われます。代表者に関する破産手続きも同時に行いますので。決定が確定した1ヶ月後に免責がされます。
再建型の手続きである『民事再生・会社更生』の流れ
再建型手続である民事再生・会社更生については、上記の手続きの開始決定までは基本的に同じような流れで進みます。そして、民事再生・会社更生では、再生計画案を提出し、債権者による決議を経た上で裁判所が計画案について認可決定を下し、計画通りの返済がされて初めて、手続きが終了となります。
法人の倒産・破産に強い弁護士 4つの選び方とは?
ここからは、法人の倒産や破産に強い弁護士の選び方について説明していきます。
①経験が豊富な弁護士
倒産状態になったとき、どのような解決方法がふさわしいかは会社の状況によって異なります。当然ですが、適切な判断のもとベストな対処方法を選択し、最善の解決を導くには経験豊富な弁護士に依頼をする必要があります。
経験豊富な弁護士の調べ方として、インターネットで各法律事務所のHPを調べてみましょう。法人破産の解決事例が豊富に載っていたり、サイトでPRしたりしている場合は、相談先の候補となります。
②地元の裁判所事情に詳しい弁護士
弁護士を選ぶときはできるだけ地元(会社所在地の管轄裁判所内)を中心に探すのが得策です。破産は裁判所によって運用方法が異なるため、地元の裁判所事情に精通していることが条件となるからです。
また法人破産の際は弁護士との面接は複数回に及ぶため、法律事務所が遠く離れていると出かけるのも一苦労です。その意味でも、できるだけ会社所在地に近いところの事務所に依頼をすることをおすすめします。
③相談時に親身になってくれる弁護士
人柄も重要なポイントです。弁護士ならだれでも同じということはありません。弁護士の人柄は相談時に分かります。破産に至るまでのやむにやまれぬ事情を丁寧に聞き、現在抱えている不安に寄り添ってくれる人と出会えれば、仮に破産という結果になっても前向きになれるものです。
相談時には1つの方法だけでなく、他の方法も提示してくれる人、様々な提案をしてくれる人、メリットばかり話さない人はバランス感覚も良く信頼できます。法人破産は経営者にとって深刻な問題で、今後の人生に大きな影響を与える出来事ですので、できるだけ親身になってくれる人に依頼をしましょう。
④弁護士費用
法人破産をする際の弁護士費用の相場は50万円以上になります。弁護士費用以外にも、法人破産に必要な予納金など裁判所費用等の実費がかかります。実際の費用は債権者数や負債額、事業規模によって変わってきます。費用について不安なときは何件か相談をして見積もりを取ることをおススメします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?倒産にはさまざまな種類があり、再建型を選択すれば、倒産でも会社を存続させることもできます。倒産は当事者である会社以外の関係者にも大きな影響が出ます。そのため、早い段階で倒産を決断することも重要になってくるでしょう。
「破産」という選択をすると自身の生活すらも厳しい状況となるケースもありますので、「破産」は最後の手段と考え、まずは再建ができないかを検討してみましょう。