『補助金・助成金』を探すところから受給までの流れについて解説
補助金や助成金は、国や自治体が産業振興や雇用の推進、地域活性化などに貢献する事業に向けて交付される資金で、金融機関からの融資などと違って返済義務がないことが大きな特徴といえます。
今回は、補助金・助成金を探すところから受給するまでの大まかな流れを紹介していきます。
補助金と助成金の違いとは?
補助金も助成金も国や地方公共団体、民間団体から支出されて原則は返済不要になるという所に違いはありませんが、大きな違いとして、補助金は予算が決まっていて最大何件という決まりがあります。そのため、公募方法によっては抽選や早い者勝ちになるなど、申請してももらえない可能性もあります。一方助成金は受けとるための要件が決まっているので、それを満たしていればほぼ支給されます。
- 補助金:企業が成長する取り組みに対して支援する為に用意されている制度。補助金の種類は、1万種類以上と言われている。
- 助成金:厚生労働省が中心となり公募している雇用に関する支援金もしくは経済産業省から受給される研究開発系の2つに分類。
補助金・助成金探すところから受給するまでの流れ
補助金・助成金は一般的に以下の流れになります。
- ①補助金・助成金を探す
- ②申請を行う
- ③審査を受ける
- ④採択・交付決定、事業実施
- ⑤実施報告、補助金・助成金の受給
では、①~⑤について詳しく説明していきます。
①補助金・助成金を探す
自社の状況に合った補助金・助成金を探すことが最初のステップです。今はインターネットでの情報収集が一般的でしょう。
経済産業省、中小企業庁や厚生労働省、各地方公共団体や民間の財団法人など補助金・補助金・助成金事業を実施している機関のホームページで補助金・助成金に関する情報を入手できます。専門家に話を聞くのも良いでしょう。
最適な補助金・助成金が見つかったら、公募によっては、説明会が開催される場合もあります。まずは各機関が実施する説明会に参加しましょう。ただし、説明会への出席が審査に影響することはありません。
- 中小企業庁の運営する『ミラサポ』
- 中小企業庁の補助金公募サイト
- 各地域の振興公社/産業振興公社のHP
- 厚生労働省のHP(助成金)
②申請を行う
「申請する」と言っても、申請書を作成するだけではありません。ここでは申請のステップを紹介します。
必要書類、ID取得など事前の準備
申請書の内容とは関係のない決算書類や登記簿謄本等、必要な書類は先に揃えておきます。申請書作成は期限までならいつでも可能ですが、提出先となる役所等の窓口は開設時間が決まっているからです。
補助金・助成金制度によっては、事前に「認定支援機関」等の各支援機関と連携したり、「経営革新計画」等の承認を受けておく必要がある場合もあります。電子申請の場合は、事前にIDを取得しておく必要があります。それらの準備が整った上で、申請書を作成するほうが効率的です。
公募要項をよく確認する
公募要領とか募集要項など補助金・助成金の制度概要を説明した書類のことですが、まずはそれをよく確認しましょう。お役所言葉が多く、よく公募要領が分からない場合、公募には必ず連絡先がありますので、電話で確認したりしましょう。
事業計画を作っておく
いきなり申請書を作成し始めても、内容に一貫性を持たせるのは難しいもの。できれば、事前に事業コンセプト、マーケティング戦略、利益計画、資金計画が組み込まれた独自の事業計画書をつくっておくと良いでしょう。その内容を申請書の書式に合わせればよいので、比較的、簡単に申請書を作成することができます。
申請書の作成
事前準備ができたら、いよいよ申請書の作成に取り掛かります。申請書は、読みやすさ、わかりやすさを心掛けて作成します。たとえば、記載欄の質問には字数制限を守ってきちんと答える、専門用語には注釈をつけるのも基本です。また、符号体系を統一することで、話の一貫性を保つことができます。
文字のフォントで変化をつけるのも良いですし、図表やグラフなどは、ビジュアルにも気を配ります。統計を利用すると客観性が高まり、説得力が増します。
- 審査基準を満たしている根拠を示す
- 専門用語は使わない
- 思い入ればかり強調しない
- 目標を明確に数値化する
- 現状の把握・分析を行う
最終チェック
申請書が作成出来たら、最終チェックを行います。誤字脱字、計算間違いは当然のこと、専門用語が多すぎないかなど、わかりやすいかどうかもチェックします。自分だけでチェックするのではなく、専門家など第三者の目で見てもらうのも有効です。
申請書、添付書類を必要部数揃えたら、いよいよ申請です。
③審査を受ける
補助金・助成金は、おおむね資格審査、書類審査、面接審査を経て採択されるという流れになります。資格審査では、助成対象者として適合しているかどうかをチェックされます。
書類審査では、審査委員がそれぞれの制度の採点基準に基づき申請内容を審査します。新規性、独自性、収益性、実現可能性に加え、近年では社会貢献性などが採点基準に取り入れられていることもあります。
資格審査、書類審査に通過した後、面接審査に臨みます。ぶっつけ本番ではなく、何度か面接の練習をし、時間内にきちんとアピールできるようにしましょう。
④採択・交付決定、事業実施
審査を通過すると、補助金・助成金が交付される権利を得られます。その後の事務手続き等の説明会を経て補助金や助成金の対象期間に入ってはじめて、事業を実施できます。それまでは、申請事業に着手することはできません。申請事業の実施期間中は、通常の事業とは別に経理処理を行います。計画の変更・中止等は、事務局に相談・報告しなければなりません。
また、事業を実施していると、計画段階より費用が増減する場合がありますが、大幅に増加した場合などは、補助金や助成金の対象とみなされなくなる可能性もありますので、事業の実施計画、特に費用の見積もりには確度が求められます。
⑤実施報告、補助金・助成金の受給
事業完了後は、実施した事業の内容やかかった経費につき報告書を作成します。補助金や助成金の中には、事業実施中にも中間報告を求められることもあります。
事業がきちんと実施されたことが確認されると、補助金・助成金の受給金額が確定し、晴れて指定口座に補助金・助成金が入金されます。助成事業の関係書類は5年間の保存義務がありますので、しっかりと保存しておきましょう。
補助金や助成金申請には専門家に頼ることもあり!?
補助金・助成金は、返済不要のもらえるお金で、とてもお得な支援制度ですが、補助金・助成金はいずれの制度も手続きが複雑で、そのポイントや交付されるコツは初めて申請される方にはとてもわからずらく、時間や手間がかかります。また、時間や手間だけの問題だけでなく、提出書類に不備があっては補助金も助成金も受給が非常に難しくなります。
専門家への申請代行は、書類作成の手間が省けるのみならず提出書類の完成度を高めるのにも効果的になりますので、申請にあたって少しでも迷いや戸惑いが生じるのであれば専門家の手を借りるべきです。
但し、専門家に依頼する場合には、着手金や成果報酬などの費用が発生しますので、事前に確認をしておきましょう。
具体的に補助金や助成金の専門家とはどういった職種の人?
主な専門家として挙げられるのが、法務や財務、労務に関する専門知識や経験を有する弁護士、行政書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、中小企業診断士などです。
この中から、例えば雇用関係の助成金を申請するのであれば労務の専門家である社会保険労務士、運転資金や設備資金などの調達を目的とした補助金を申請するのであれば税理士などのように、申請する補助金や助成金の種類や目的にあわせた専門家に依頼することが大切です。
中でも、専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対して国が認定する公的な支援機関である「認定支援機関(経営革新等支援機関)」に認定された専門家からは、より高い精度のサポートを期待できます。
認定支援機関とは正式には「経営革新等支援機関」と言います。経営課題を抱えている中小企業、小規模事業者の相談・支援を行う士業や企業を国が審査して認定しています。中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関となっています。具体的には、商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な認定支援機関として認定されています。
まとめ
税金や雇用保険料が財源となり、事業主としては積極的に活用すべき制度といえるでしょう。手続きはやや煩雑になりやすいため、税理士や社会保険労務士や専門のコンサルタントに相談することをおすすめします。
どちらも返済不要の資金調達方法ですが、支給されるまでに時間がかかることを考え、創業時にはほかの資金調達方法(融資や出資など)についても検討するようにしましょう。