出資で未来を切り拓く!ベンチャーキャピタルのメリット・デメリット分析
ベンチャーキャピタル(VC)は、スタートアップにとって上場を夢から現実に変えるための心強いパートナーですが、出資を受ける際の注意点もあります。自分の事業はVCに出資を受けるべきなのか否か、メリット・デメリットを知ったうえで決めましょう。
そもそも『ベンチャーキャピタル(VC)』とは?
ベンチャーキャピタル(VC)とは、ハイリターンを狙った投資を行う投資会社のことです。未上場の中でも、特に成長性が高いと見込まれる企業に対して出資(投資)を行います。
ベンチャー企業の株式などを引き受けることによって投資をし、その企業が株式公開するなどしたのち株式などを売却し、キャピタルゲイン(株式等の当初の投資額と公開後の売却額との差額)を獲得すること目的としています。一般的には、技術が革新的であったり、アイデア、ノウハウが優れていなければベンチャーキャピタル(VC)からの投資を期待するのは難しいのが現状です。
投資する資金については、自己資金を活用して投資するパターンと、投資ファンド(投資事業組合)を設立して投資家から資金を集めて、ベンチャーキャピタルがその投資ファンドのマネージャーとして未上場企業に投資するパターンがあります。
(参考記事)ベンチャーキャピタル(VC)とは?役割や特徴などを解説
主なベンチャーキャピタル(VC)種類
ベンチャーキャピタルVCには主にその出資元や投資方針によって下記のような種類があります。
- 独立系VC:グロービスキャピタルパートナーズ、JAFCO(ジャフコ)
- 保険系VC:ニッセイ・キャピタル、東京海上キャピタル
- 事業会社系VC:KDDI∞Labo、DGインキュベーション、サイバーエージェント・キャピタル
- 金融機関系VC:SMBCベンチャーキャピタル、三井住友海上キャピタル、みずほキャピタル
- その他金融系VC:SBIインベストメント、オリックス・キャピタル
- 独立系インキュベーター:サムライインキュベート、インキュベイトファンド
これらの種類と投資会社は一部に過ぎず、他にも沢山の投資会社があります。それぞれ投資する分野や方針が違いますので、出資を検討している方は、それぞれの特徴を調べる必要があります。
企業の成長ステージと出資の関係
ベンチャー企業が創業し、事業を軌道に乗せるまでの過程は次の5段階に区分できると考えられています。これを成長ステージと呼びます。最近ではビジネスモデルを具体化し、プロトタイプの開発段階という「シード」「アーリー」ステージの企業に多く対して投資されています。この「シード」「アーリー」への投資増の傾向は、起業まもないスタートアップ企業にとっても心強く感じるでしょう。
- シード:研究、開発、会社設立などの段階
- アーリー:売上の安定していない会社設立初期
- エクスパンション(シリーズA):事業が本格的にスタートし、顧客が増え始める成長段階
- グロース(シリーズB):事業が軌道に乗り始めた段階
- レーター(シリーズC):売上拡大や株式公開を控えた時期
以下、個別のラウンドステージについて、説明していきます。
シード
シードというのは、ラウンドの第一段階であり、そのまま「種」という意味です。企業が種の状態、芽が出る前ということで、起業前の状態を表します。
商品やサービスのリリースに向けて準備をしている段階のため、多くの資金は必要とされませんが、市場調査や会社設立費用、人件費などのコストは最低限発生するものです。事業を開始していないとはいえ、場合によっては資金調達が必要になります。
アーリー
アーリーは起業直後の段階で、いわゆるスタートアップ企業のことです。
事業を開始したものの、軌道に乗るまでは赤字経営となる企業は少なくありません。経営を行うために必要な運転資金や設備資金、商品やサービスに必要なライセンス使用料、販売促進費、人件費等々、業績に関わらず発生するコストもかさんできます。資金繰りを常に考えなくてはならない段階です。
エクスパンション(シリーズA)
事業が本格的にスタートし、顧客が増え始める成長段階がシリーズA(エクスパンション)です。商品やサービスのリリースも開始され、認知度を広げるための市場調査やマーケティングにも拍車がかかります。
シリーズAは、事業が軌道にまだまだ乗り切れず、売上を伸ばすために優秀な人材を増やしたり、設備投資をしたりと、資金不足に悩まされる時期でもあります。必要とされる資金も増えてきて、資金調達の規模は数千万円から2億円程度とされています。
グロース(シリーズB)
事業が軌道に乗り始めた段階をシリーズB(グロース)といいます。収益が伸びて経営が安定してくるため、会社をより大きくするために株式上場を行う企業もあります。
創業者や投資ファンドが投資資金の回収を行うエグジット(イグジット、EXIT)間近の段階となるため、黒字化することが求められます。さらに、設備投資や広告宣伝費、優秀な人材の確保など、必要とされる資金が大きくなるため、資金調達の規模は数億円にのぼります。
レーター(シリーズC)
黒字経営が安定化し、IPOやM&Aを意識する段階をシリーズC(レイター)といいます。エグジットをするために、売上の確保と十分な利益を求められます。
企業によっては資金調達が不要になるほど収益が安定することもありますが、事業拡大のため全国や海外を視野に入れた展開を進める場合には、大規模な資金調達が必要となります。そのため、資金調達の規模は数億円から数十億円と高額になります。
ベンチャーキャピタル(VC)に出資されるメリット・デメリット
ベンチャーキャピタル(VC)に出資されるメリット
資金を得られ、返済義務がない
ベンチャー企業にとって資金は死活問題です。銀行など金融機関からの融資と異なり、出資の場合、資金を得られ、更に返済義務が生じないことは大変なメリットです。
資金繰りの手間を削減でき、事業の成長に集中できる
ベンチャーキャピタルから出資を受けることで、財務状況が改善し、金融機関からの融資を受けやすくなる可能性があります。事業をさらに拡大したいと考えたときに、追加出資を受けられると、事業成長のためにリソースを集中させることができるため、資金繰りの手間を削減することができます。
世間のアピールになる
いくら魅力的なアイディアを持っているとしても、それが世間に知られなければ成功することはできません。VCから出資を受けるということは、それだけ事業が魅力的だと世間にアピールすることにつながります。
人脈などのネットワークが広げられる
VCは多くの起業家や企業、投資家とつながりを持っています。そのネットワークを活かすことで、事業提携先を見つけられる可能性があります。ベンチャーキャピタルが出資する別の企業との事業提携や協業も橋渡ししてくれる場合もあります。
経営ノウハウを得られる
VCから役員を派遣してもらい、経営などの支援を受けることができます。例えば学生起業だと社会経験の浅さゆえ、失敗することがあります。第三者の意見をもらうことで、事業の見直しができ、成長することが期待できます。
ベンチャーキャピタル(VC)に出資されるデメリット
自分たちのやりたい経営方針ができなくなる可能性がある
VCは資金回収のため利益を重視しがちです。資金回収が見込めないためと判断され、事業の大幅な変更を求められることもありえます。事業内容、経営方法に介入されても、起業家は出資を受けていることで、拒みにくいです。起業時に設定した方針とは、異なった道を歩き出す可能性があるという事です。
ベンチャーキャピタルのアドバイスが正しいとは限らない
ベンチャーキャピタリストのなかには起業経験のない方や、業務を熟知していない方もいることがあり、一般論やフレームワークを事業に当てはめる方もいらっしゃいます。先進的なことをしているのに、不適切なアドバイスによってストレスを抱えたり、事業を前に進めることができない場合もあるので注意が必要です。
事業の成長性が危ぶまれれば早期回収が起こる
万が一、市場の急変や想定外の競合が出現した場合、あなたの手から事業が離れてしまう可能性があります。
まとめ
ベンチャーキャピタルからの出資を受ける事は事業をスタートした起業家にとって、こうした豊富な経営ノウハウには学び従うべき部分も多く、他社との業務提携や協業は魅力溢れるサポートです。しかし安易に出資を受けることを決めてしまうと、思わぬ事態になりえます。
銀行の融資を受けるのか、ベンチャーキャピタルから出資を受けるのか、またそのベンチャーキャピタルでよいのか。自分の事業に合う資金調達をしっかり考えましょう。