日本政策金融公庫の融資制度『新規開業資金』について解説
起業・開業したい人や起業・開業して間もない人のなかには、政府系金融機関である日本政策金融公庫から融資を受けたい人もいるでしょう。
そして日本政策金融公庫が実施する創業融資、また各融資に伴う特例制度は、政府が行う政策に基づき複数の種類があります。創業前、もしくは創業まもない企業への融資支援であることは共通していますが、創業者の年齢や業種、その他諸々の条件によって、それぞれ異なる融資や特例が適用されることになります。
今回は、日本政策金融公庫の融資・特例制度の中で最もポピュラーである「新規開業資金」について解説していきます。
※この記事を書いている「資金調達のミカタ」を運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
そもそも日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫とは、政府系金融機関の1つであり、株式会社日本政策金融公庫法に基づいて2008年10月1日に設立された財務省所管の特殊会社です。
形式上、「株式会社」となっていますが、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている特別な株式会社であり、一般の民間会社や民営化を前提とした特殊会社ではありません。なお、日本政策金融公庫が株式会社の形態をとっているのは、株式会社のガバナンスの仕組みを活用して、透明性の高い効率的な事業運営を行うためであるといわれています。
そして全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴になります。
起業・開業者におススメの日本政策金融公庫の融資制度
ここからは、起業・開業者におススメの日本政策金融公庫の融資制度を3つご紹介します。
新規開業資金
新たに事業を始めようとしている方や、事業を始めて7年以内の方を対象にしている融資制度です。融資限度額は7,200万円で、そのうち4,800万円を運転資金に、残りを設備資金に充てることができます。制度を受けられるのは、開業・起業したい事業と同じ業種の企業に6年以上勤めた人や、技術やサービスに創意工夫を加えた事業を提案できる人、雇用の創出を伴う事業を行う人などの条件があります。原則として保証人や担保を必要としますが、自己資金要件は設定されていないので、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性があります。要件を満たし、審査を通過すれば高額融資が実現しやすく、金利も安いため、多くの開業希望者が利用しています。返済期間は運転資金が7年以内、設備資金が20年以内になります。
女性、若者/シニア起業家支援資金
「新規開業資金」とほぼほぼ内容は一緒ですが、あなたが女性、もしくは30歳未満の若者か、55歳以上のシニア起業家であれば利用すべき制度はこちらになります。融資限度額も同じく7,200万円で、返済期間も「新規開業資金」と同一です。この制度を利用したい方で、東日本大震災の影響で離職・創業する方や、被災地で創業する方は他の特例を受けられる可能性もあります。
新創業融資制度
「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、原則として保証人や担保を必要としますが、無担保・無保証人で最大3,000万円までの融資を可能にしているのが「新創業融資制度」です。初めての起業・開業者にとって、リスクの少ない融資制度で、多くの融資希望者が集っている人気の制度です。
新規開業資金の概要と特徴について
上記でもお知らせしましたが新規開業資金とは、これから新たに事業を始める者や、事業を始めてからおおむね7年以内の者を対象として日本政策金融公庫が行なう創業関連融資のひとつです。
新規開業資金の概要については以下になります。
- 資金の使いみち:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金及び運転資金
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)
- 金利:基準利率。ただし、所定の要件に該当する方が必要とする資金は特別利率が適用になる
日本政策金融公庫の新規開業資金を利用して融資を受けた場合、資金の使いみちは設備資金や運転資金が指定されています。事業をはじめるために必要な設備の購入費用や事業を継続するために必要な資金が対象です。返済期間は設備資金なら20年以内、運転資金なら7年以内と定められています。元金の支払いを先延ばしにする据置期間はいずれも2年以内ですが、企業の状況や融資担当者の判断によって異なるので、希望した据置期間を必ず設定できるとは限りません。
なお、金利は日本政策金融公庫の基準利率が定められていますが、一定の要件に該当する人は特別利率が適用になる場合があります。新規開業資金の金利を知りたい人は日本政策金融公庫の公式サイトにある「新規開業資金の概要」から確認してみましょう。
新創業融資制度と組み合わせると無担保かつ無保証人になる
新規開業資金は上記でご紹介した新創業融資制度と組み合わせると無担保かつ無保証人で融資を受けられます。新創業融資制度は新規開業資金と同じ日本政策金融公庫の融資制度ですが、他の融資制度と組み合わせて利用することができます。新規開業資金を単独で利用する場合は担保と保証人の設定が必要な傾向がありますが、新創業融資制度と組み合わせることで無担保かつ無保証人で融資を受けられます。
ただし、新創業融資制度を利用するためには、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意しているなどの要件を満たしたうえで、所定の審査に通過する必要があるので注意が必要です。
新規開業資金を利用できる要件について
新規開業資金を利用できるのは所定の要件を満たしている人のみです。要件には開業年数と事業計画に関する内容が定められているため、新規開業資金を検討している人は注意が必要です。具体的には、新規開業する人か事業をはじめてからおおむね7年以内の人が利用できます。これから事業をはじめる人を例にとると、開業に必要な設備を揃えるために新規開業資金を利用することができます。
また、既に事業をはじめている人の場合は「7年以内」はあくまで目安の年数です。8年目以降の人で新規開業資金を利用したい人は日本政策金融公庫の窓口で相談する必要があります。
なお、日本政策金融公庫の公式サイトでは新規開業資金を利用できる人は「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限る旨が記載されています。新規開業資金を利用するには事業計画の内容などを確認する融資審査に通過する必要があるので、新規開業資金を利用して融資を受けたい人は予備知識として覚えておきましょう。
申込者からは新規開業資金を指定できない
日本政策金融公庫から融資を受ける場合、申込者が新規開業資金を指定することはできないので注意が必要です。申込者から融資制度を指定して日本政策金融公庫に融資を申し込むわけではないためです。具体的には、日本政策金融公庫は融資の申込内容を確認し、所定の審査を実施します。その審査が完了した後で融資制度が決定するという流れです。
申込者が融資制度を選択できるわけではないので、日本政策金融公庫から融資を受けたい人は予備知識として覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、日本政策金融公庫の融資制度『新規開業資金』について解説しました。
新規開業資金はこれから創業する者、創業後7年以内の者を対象とする幅広い融資制度です。取り扱われてきた歴史も長く「創業融資といえば、まず新規開業資金」といっても過言ではありません。
日本政策金融公庫側にも、新規開業における融資審査のノウハウがかなり蓄積されており、日本経済の活力維持との政策目的を実現するため、さまざまな角度からできるだけ融資の可能性を追求する姿勢で融資審査を行っています。さらに、時代のニーズに合わせ「新創業融資」や「資本性ローン」といった特例制度も制定されたことでより一層使いやすい融資制度となっています。
創業時の不足資金調達方法として、あるいは事業計画の実現をたしかなものにするため、検討してみてはいかがでしょうか。