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簿外債務とは?M&Aにおける簿外債務への対応について解説


簿外債務はM&A案件において、基本的に買い手がチェックするもので、売り手側もある程度の知識を持つことが必要になります。

そこで今回は、簿外債務について解説していきます。

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そもそも簿外債務とは?

簿外債務というのは貸借対照表(会計帳簿)に記載されていない、帳簿外における債務のことです。まさしく名前の通りというわけです。帳簿外の債務と聞くと、一見なにか裏で怪しい資金が動いているのではないか?などと想像される方もいらっしゃるかと思いますが、簿外債務自体それほど珍しいことではありません。

特に中小企業においては簿外債務の存在は普通のことで、たとえば従業員への未払賞与や退職金などがその一例として挙げられます。こうした貸借対照表に計上されていない簿外債務があった場合、その存在を理由にM&Aの価格を下げられることがあります。適切な対処を行い交渉を順調に進めるためにも、簿外債務の最低限の知識は不可欠です。

簿外債務の種類

M&Aを行う際に、簿外債務が存在するかどうかのチェックは非常に重要です。簿外債務となるケースとしては、主に、以下のようなものが挙げられます。

未払い残業代

一般的に、ベンチャーの簿外債務で一番多いのは未払い残業代(未払い時間外手当)です。先ほどあげた賞与や、次に紹介する退職金の制度はないベンチャーも少なくありませんが、残業代はどの会社も必ず支払う必要があるからです。

未払い残業代の時効は2年間です。買い手側すると、顕在化している未払い残業代に加え、過去2年をさかのぼったサービス残業代を請求されるリスクを背負っていることになります。そのため実際に請求される未払い残業代より多めに簿外債務として引当金計上するのが通例となっています。

買掛金

買掛金とは、取引先との取引によって生じた買入代金のうち、まだ支払いがすんでいないものを指しますが、この買掛金の計上漏れは簿外債務の原因のひとつです。また、電気やガスなどの未払金、保険料やリース料の未払費用など、これらの計上漏れも簿外債務のひとつとなり得ます。

債務保証

企業がほかの企業や個人の保証人となっている場合、債務者が債務不履行に陥ると連帯保証人として債務を負うことになります。決算書に引当金を計上する代わりに、連帯保証人である旨と保証金額を注記に記載して処理されることも多く、簿外債務になりやすいといえるでしょう。

リース債務

リース債務とは、ファイナンスリース取引のときに発生する債務のことです。リース債務を賃貸借処理として仕訳する際に、簿外債務が発生する可能性があります。リース取引は数年単位の長期間に及ぶものもあるため、債務履行も数年と長いものになりがちです。通期の支払いリース料のみを費用として計上するため、長期債務が決算書に表面化されにくく簿外債務となってしまいます。

未払いの社会保険金

社会保険は正社員だけでなく一定の要件を充足するパート社員も加入することになります。本来社会保険に加入すべきパート社員について未加入となっている場合には、未払社会保険料の簿外債務が発生しています。

訴訟リスク

自社で製造した製品について、訴訟を起こされ敗訴となった場合には、損害賠償義務を負う可能性があります。敗訴が濃厚で損害賠償義務が発生する可能性が高い場合で、金額を合理的に見積もることができるときなどは、会計上、引当金計上が必要となります。しかし、会計上、引当金計上が必要であるにもかかわらず引当金計上を行っていない場合があり、損害賠償に関する引当金の簿外債務が発生していることになります。

賞与引当金

賞与引当金とは、将来従業員に支払う予定の賞与に関する引当金です。平成10年の税制改正において、賞与引当金は損金計上が認められなくなったため、その実務処理が疎かになり簿外債務となる可能性が高いといえます。

退職給付引当金

一般的な企業であれば退職金制度を設けているところが多いでしょう。おそらくあなたの会社も退職金制度はあるかと思います。現在従業員を雇っている時点で、将来従業員に支払う予定の退職金というのが積み上がっていっていることになります。つまり、会社側は退職金という負債を抱えている状態にあります。

そこで、本来は将来支払う予定の退職金を「退職給付引当金」として見積もり計上する必要があるのですが、税務会計上はその計上をしていなくても問題はありません。その結果、多くの企業では退職金を支払った時点で費用計上するのが実態ですので、「退職給付引当金」の分が帳簿から抜け落ちて、簿外債務となってしまうのです。

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M&Aにおける簿外債務への対応

これまで簿外債務について紹介してきましたが、M&Aを進めていくうえで、実際にはどのように対処すればよいのでしょうか?

買収側にとっては問題になる

M&Aによって会社を売却すると、当然ながら買収側がすべてを引き継ぐようになり、もちろん簿外債務があった場合も、その債務を引き継がなければなりません。そのため簿外債務は、買収側にとってはこれから肩代わりする借金のようなものなのです。当然、買収側はM&Aアドバイザーなど専門家に依頼しながらしっかりと簿外債務について調査をおこないます。

売却側のとるべき対応

売却側の対応として重要なのが、簿外債務をへたに隠そうとしないことです。たしかに、未払い残業代の分、売却額から差し引かれるといったことはあります。しかし簿外債務の存在が大きな問題になり、M&Aが取引が取りやめになるということは基本的にありません。むしろ、簿外債務をへたに隠した場合、その不誠実な対応が相手の不信感を招き、M&A交渉に支障をきたします。簿外債務への対応はM&Aアドバイザーが慣れているので、誠実に対応していれば適切に対応してくれます。くれぐれも簿外債務を隠すようなことはせず、正直に開示するという姿勢を心がけるようにしてください。

まとめ


いかがでしたでしょうか?今回は、簿外債務について解説しました。

M&Aを行う場合は、簿外債務についてきちんと理解している専門家への依頼が欠かせないため、会計監査を行っている公認会計士やM&A仲介会社に相談することをおすすめします。

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