日本政策金融公庫の3つの窓口の違いについて
起業・開業時の融資借入先として多く活用されている日本政策金融公庫には、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3つの窓口があります。
日本政策金融公庫で借り入れをする際に窓口を間違えないよう、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の違いを事前に把握しておきましょう。
そもそも日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫とは、「日本公庫」とも呼ばれ、100%政府出資の金融機関です。
平成20年に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)が統合され日本政策金融公庫が設立されました。その目的は「国民一般、中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援する」ことであり、国の政策のもと、創業支援や中小企業の事業支援などを重点的に行っています。
また、基本理念の中に「民間金融機関の補完」も謳われており、一般の銀行では融資されないようなリスクがある事業への融資も行っています。
日本政策金融公庫の3つの窓口
日本政策金融公庫には、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3つの窓口があります。それぞれについて説明します。
国民生活事業
国民生活事業は、地域の身近な金融機関として、小規模事業者や創業企業への事業資金融資のほか、教育資金融資なども行っています。創業者や小規模・零細・中小事業者は、基本的には「国民生活事業」が窓口になります。
- 小口の事業資金の融資
- 創業支援、事業再生支援、事業承継支援、海外展開支援
- 国の教育ローン、恩給・共済年金等を担保とする融資
中小企業事業
中小企業事業は、融資、信用保険などの多様な機能により、日本経済の活力の源泉であり、地域経済を支える中小企業・小規模事業者の成長・発展を金融面から支援しています。ある程度の年商規模や業歴のある中小企業を対象としています。
また、「国民生活事業」と「中小企業事業」の使い分けに関する明確な線引き等については特に公表されていませんので、少々、分かりにくいです。なお、中小企業事業の支援先の特徴としては、1企業あたりの平均融資金額は80百万円、平均資本金額は38百万円、平均従業員数は72人となっています。およそこの規模の中小企業を対象にしていると判断することはできます。
- 中小企業への長期事業資金の融資
- 新事業支援。事業再生支援、事業承継支援、海外展開支援
- 証券化支援
農林水産事業
農林水産事業は、農林漁業や食品産業の事業者への融資を通じて、国内農林水産業の体質強化や安全で良質な食料の安定供給の支援をしています。農業、林業、水産加工・食品産業関連の事業者を対象としています。
- 担い手を育て支える農林水産業者向け融資
- 食の安全の確保、農食連携を支える加工流通分野向け融資
- コンサルティング・ビジネスマッチングなどの経営支援サービス
起業・開業時の融資相談は「国民生活事業」
上記でもお知らせしましたが、創業者や小規模・零細・中小事業者は、主に「国民生活事業」に融資申請をすることになります。
「国民生活事業」は、1取引あたりの平均融資残高は703万円前後と小口融資が主体となっており、全体の約7割が800万円以下の融資となっています。さらに、無担保融資の割合は全体の約9割となっています。また、融資先の約9割が従業者9人以下の小規模事業者であり、法人が6割、個人事業が4割の利用となっています。
まとめ
よく間違えるのは、小規模事業者が主に利用するのは「国民生活事業」であって「中小企業事業」ではないことです。「中小企業事業」の対象となる明確な基準は特にありませんが、「年商5億円くらいを超えてから、中小企業事業に相談」というイメージを持っていてください。実際には、年商10億円の企業でも「国民生活事業」とお付き合いをしている企業もたくさんあります。利用窓口が分からない場合は、日本政策金融公庫に直接相談することも可能です。
また、「農林水産事業」については、その名称から農家や漁師さんを限定としていると思われがちですが、たとえば、缶詰などを加工している水産加工業者なども「農林水産事業」の対象になります。また複数企業による商農工連携事業などを行う場合、「農林水産事業」から融資を受けることができる可能性もありますので、窓口に相談してみてください。