協調融資とは?メリット・デメリットや協調融資を受ける際のポイントを解説
現状の売上金額等に比較してやや過大な資金調達をしようとするケースが考えられます。例えば、企業が設備資金を調達しようとする際、現状の売上規模から考えるとやや過大と思われる融資は、1つの金融機関単独での融資申し込みでは見送られる可能性が高くなります。
そこで今回は、2つの金融機関から同時に融資を受ける、協調融資について解説していきます。
協調融資とは?
2つ以上の金融機関から同時に融資を受けることを協調融資と言います。
協調融資の「協調」とは、複数の金融機関どうしで協調することを意味します。そのため、たとえばある企業に対して、日本政策金融公庫が1,000万円、民間の金融機関が1,000万円、計2,000万円を融資する形式を採ります。
なお、協調融資の反対語は「単独融資」であり、企業に対して一つの金融機関が単独で融資を実行する通常のスタイルです。
協調融資の組み合わせパターン
協調融資は、以下組み合わせのパターンがあります。
政府系金融機関とメインバンクの協調融資
日本政策金融公庫など政府系金融機関とメインバンク(メインで取引をしている民間の金融機関)による協調融資のことを指します。創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野を中心に実行されています。
政府系金融機関と保証協会付の融資の協調融資
日本政策金融公庫など政府系金融機関と民間の金融機関(信用保証付きの融資)の協調融資です。どちらも創業融資に力を入れており、事業内容や成長分野であれば、創業時にでも実行されやすい特徴があります。
保証協会付の融資とメインバンクの協調融資
民間の金融機関(信用保証付きの融資)とメインバンクのプロパー融資(直接、金融機関から借り入れる融資)を組み合わせた融資スタイルです。返済不能に陥った場合のリスクを保証協会付き融資は信用保証協会、プロパー融資はメインバンクに分散できる意味で、実質的に複数の金融機関から融資を受けたのと同じといえます。
メインバンクとサブバンクの協調融資
メインバンクとサブバンク(メインで取引をしていない民間の金融機関)による協調融資のことを指します。日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的機関が介入しないのが特徴です。
協調融資を受ける際のポイントとは?
協調融資を申し込む際のポイントは、核となる金融機関を予めつくっておくことです。違う言い方をすれば、その協調融資を支援してくれる金融機関をつくっておくことです。
協調融資の場合、全ての金融機関の足並みが揃わないと融資が実行されません。例えば、日本政策金融公庫の審査は通ったけれども、○○信用金庫のプロパー融資の審査が通らなかった場合、結果として融資が全く受けられないという事になりますそのような事態にならないように、事前にその協調融資を積極的に支援してくれる金融機を作っておく必要があります。
その会社の金融機関とのお付き合いの状況、借入額、返済実績等を考慮し、最初に核となってくれそうな金融機関に協調融資の申し込みをします。そこで、その金融機関に協調融資の積極的な協力が得られそうであれば、その金融機関に他行を巻きこんでもらい、一緒になって応援しましょうという雰囲気を作ってもらえれば、その協調融資の成功確率は上がり、希望額の融資を受けられる可能性が高まります。
協調融資のメリット
単独融資と比べた協調融資のメリットについて説明します。
融資規模が大きい
協調融資は単独融資よりも融資規模が大きくなる傾向にあります。後述するように、返済不能に陥っても金融機関の貸倒れのリスクが半減できます。そのため、中小企業に対し、単独融資では二の足を踏むような高額案件の融資規模でも、協調融資なら可能なケースがあり得ます。特にベンチャー起業などが典型的な例でしょう。
希望額の融資を受けられる可能性がある
1つの金融機関では希望額の融資を受けるのは難しいという場合、協調融資にすることで希望額の融資を受けられる可能性があります。金融機関としてはリスクを分散することができるため、融資をしやすいといえます。
将来的に資金調達の幅が広がる
複数の金融機関と付き合っておくことで、今後事業拡大を行うなどで再度融資を希望するときに実績がある金融機関とは話が進めやすく、資金調達の幅が広がるといえます。
成長戦略分野に対して積極的
日本政策金融公庫とメインバンクの協調融資の場合、創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野に対して積極的に協調融資を実行されています。そのため、協調融資は創業融資の選択肢となり得る可能性があります。
協調融資のデメリット
融資実行までの時間がかかる
例えば、日本政策金融公庫からのみ融資を受ける場合には、一般的には1ヶ月から1ヶ月半で融資を受けることができます。しかし、協調融資の場合には、2ヶ月から3ヶ月融資を受けるまでに時間が必要な場合があります。
どちらも融資がNGになってしまう
上記でも説明しましたが、基本的に日本政策金融公庫の方が先に結果としては出ることがあり、最終決定は民間の金融機関の結果を待つことになり、仮に日本政策金融公庫はOKであってももう一方の金融機関がNGなら、結果的に日本政策金融公庫もNGとなります。協調融資の場合、2つの金融機関からの融資をもとに事業を行うので、片一方のみだと資金が足りず、想定していた事業計画では進められないことになるためです。
手間がかかる
基本的にはほぼ同様の資料を準備すれば問題ないと思いますが、状況によってはそれぞれの金融機関で異なる資料が必要な場合もあります。また上記でも説明しましたが、日本政策金融公庫と信用保証協会それぞれの担当者と面談を行う必要があり、手間がかかるといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、2つの金融機関から同時に融資を受ける、協調融資について解説しました。
1つの金融機関から融資を受けるよりも時間がかかることにはなりますが、希望する金額の融資を受けることができるかもしれません。