融資面談に信頼できる人物や専門家などを同席(同行)させたいが大丈夫なのか?
起業・開業時の融資借入先として代表的な日本政策金融公庫や信用保証協会との融資面談では、融資判断のために経営者が銀行員と面談するものです。銀行員は、決算書や計画書などの資料について、経営者の口から説明してもらい、融資判断に役立てようとしています。この時、うまく説明しなければ融資を受けられないかもしれないという不安から、面談に第三者を同行させる経営者もいます。しかし、これはマイナスにしかならないので注意が必要です。
今回は、融資面談に信頼できる人物や専門家などの第三者同席(同行)について解説していきます。
融資面談の第三者参加は基本NG!?
事業計画を作成し必要書類も提出したら日本政策金融公庫や信用保証協会の担当者から面談の予約が入り、面談へとなります。面談者は、代表取締役が原則です。ご家族で経営をされていらっしゃる方で、ご主人が事業の運営や決定権者であるのに、奥様が代表取締役となっている場合、奥様が面談者になります。その場合でも質問の回答が曖昧や実権者が別にいるな等と思われてしまうと融資や保証がNGになります。
あくまで、融資対象は企業ですが代表者と企業は同一であるとみなしており、中小企業は代表者ありきのオーナー企業であるとみています。そのため、基本的には会社の事業、財務についてきちんと理解している人を代表取締役にする事がのぞましいです。
また、公認会計士や、税理士も同席できず、代表者と個別で面談を求められるケースが多いです。これは、審査に第三者の介入を防ぐためです。創業者の場合は過去の実績(決算)がないので、本当に信用できる人物かどうか面接を通して審査されます。
なぜ代表者は融資面談に第三者を同行させたいのか?
代表者の中には面談を不安がったり、面倒に思ったりするあまり、自分以外のだれかを面談に同行させようと考える人が多いです。経営者が面談に第三者を連れていく理由でよくあるのが以下です。
- 1人では緊張して上手に話せないかもしれないが、誰かが一緒であれば落ち着いて話せるから
- 専門家と一緒に行けば、説明できないところを代わりに説明してくれるから
- できるだけ大人数で面談すれば、勢いで押し切れるかもしれないから
まず、1人では不安だから誰かについてきてほしいという理由ですが、これは逆に言えば「誰かが一緒でなければ話ができない、交渉ができない人」ということでもあります。このため、経営者としての資質を疑われることになってしまいます。面談で不安になるのは仕方のないことですし、特に創業融資の面談などでは、金融機関との交渉経験がほとんどないのですからなおさらです。しかし、だからと言って第三者を同行させれば、「こんな人に創業なんてできるのだろうか」という不安を与えることになります。万が一、同行した第三者が助け舟でも出そうものならば、起業する本人が話せずに第三者が話しているというおかしな状況になってしまいます。
税理士などの専門家を連れていく経営者も多いものです。また、創業融資の面談でも、創業融資専門のコンサルタントなどを同行させる人がいますが、経営者から話を聞きたいと考えている銀行員は専門家を「口出ししてくる第三者」としか考えません。創業融資の場合には、自分で説明できないような人が起業してもうまくいかないと思われます。したがって、専門家を同行させたところで、融資にマイナスの影響しかありません。
そして専門家や経理担当者など、複数人を同行させて面談に臨む経営者もたまにいます。対応する銀行員より会社側の人数が多く、色々なところから助け舟が出る状況ならば融資を引き出しやすくなると考えているのです。しかし、融資交渉は商談であって、争いではありません。信頼関係に基づいて、融資できるかどうか、条件はどうするかなどを決めていく場であり、数で威圧しようと考えたり、色々な意見が出ることで融資を引き出したいと考えているならば、そもそもの考え方が間違っています。それこそ、一人では何もできない経営者という印象を与えるだけで、おそらく融資は受けられなくなるでしょう。
色々な理由で第三者の同行を求めるわけですが、銀行員は第三者を同行させている経営者がどのような考えで面談に来ているのか、なんとなくわかるものです。経営者の考えをくみ取って、適切にマイナスの評価を与えていくことになるでしょう。第三者を同行させてうまく話すよりも、経営者が一人で面談を受けて、拙いとしても自分の言葉で堂々と説明しているほうが、銀行員はよほど好印象を持ちます。
融資面談での注意事項
融資面談の際には、服装は常識的なスーツかジャケットを着用しましょう。金融機関の方は身なりについてもチェックします。信頼感や計画性のある人物だと思われることがまず大事になります。
そして、いじわるな質問もあるかも知れませんが、間違っても反論したりむきになったりして、担当者を怒らせてしまったらまず融資の望みは絶たれてしまいます。面談には、基本的に、聞かれたことにだけ答え、それ以外な余計なことを言わないことが大切です。
資金繰りと事業計画書の数字を把握、その根拠を冷静に理路整然と答えることが必要です。創業計画書は自分で作成することがベストですが、知り合いやプロに作成してもらった場合でも、内容を十分頭の中に入れて、どのページに何が記載されているか把握し、自分の言葉で説明できるように想定問答をしておくことも必要です。
まとめ
経営者の中には、第三者を同行させることが融資面談にプラスになると考えている人が、意外なほどに多いものです。しかし、それが自社の社員であっても、専門家であっても、それによって面談でうまく説明できたとしても、融資交渉にはマイナスの影響しかもたらさないものです。一人で銀行に出向き、一人で面談を受けることには不安もあると思います。しかし、それでも第三者を同行させてマイナスを生むより、緊張しながらでもしっかりと経営者自身が話すべきなのです。