親子上場とは?親子上場の問題点について解説
企業のコーポレート・ガバナンス改革の一環として注目を集めているのが親子上場です。親子上場とは親会社と子会社が共に上場していることを言います。親子上場には問題点があるという指摘や、投資家にあまり良く思われていないとも言われていますが、その理由はどんなことでしょうか?
そこで今回は、親子上場についてや親子上場の問題点について解説していきます。
親子上場とは?
親子上場とは、その名の通り、親会社と子会社がそれぞれ上場している状態のことになります。日本は親子上場をしている会社が多い国で、逆に海外では多くありません。日本で親子上場している例では、ソフトバンクとヤフー、NTTとNTTドコモ、日立グループ、日本郵政グループなど、有名企業の多くが親子上場しています。
親子上場には、例えば、社内の新規事業を分離し、子会社として上場させ、成長を促すという利点もあります。ただその一方で、親会社と、子会社の少数株主との間には、利益相反の関係が発生します。親会社は、子会社の総株主議決権の過半数を有し、子会社の財務および事業の方針について、決定を支配しています。そのため、親会社の利益が優先され、その結果、子会社の少数株主の利益が損なわれる恐れがあります。
日本で親子上場している有名企業
日本は親子上場している有名企業が多くあります。
- ソフトバンクグループ(ソフトバンク、ヤフー)
- キヤノン(キヤノン電子、キヤノンマーケティングジャパン)
- 日立製作所(日立金属、日立建機)
- 日本郵政(かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行)
但し、日本の親子上場はここ数年減少傾向にあるようです。また、2000年以降からは親子上場を廃止する企業が増加しています。親子上場を廃止した企業は以下になります。
- イトーヨーカ堂(セブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパン)
- 松下電器産業(松下寿電子工業、九州松下電器、松下通信工業、松下精工、松下電送システム)
- パナソニック(三洋電機)
- トヨタ自動車(ダイハツ工業)
- ソニー(SME、ソニーケミカル、SPT)
- みずほFG(みずほ信託銀行)
親子上場の問題点
現在、親子上場そのものに対しても、さまざまな問題点が指摘されています。主だったものをいくつか紹介します。
子会社における少数株主の利益が損なわれる
まず前提となるのが、株式会社を保有しているのはその会社における株主だということです。したがって、株式会社には、株主の利益を最大化することが常に求められます。そして、親会社を持つ完全子会社であれば、株式会社である親会社の利益を上げるために行動すればよく、また上場会社であれば、投資家などの株主に利益が出るよう事業を運営すればいいわけです。しかし、親会社を持ちながら自身も上場している会社の場合は、親会社にとって利益になる行動が、株主における利益の最大化につながらない可能性かあります。
上場維持コスト
上場維持コストの問題もあります。利益相反が構造的に存在するため、それを防ぐため、親子上場をしていない上場企業よりも厳格なガバナンス体制の構築や情報開示が必要になります。また、親会社と子会社両社が上場維持コストを支払っていますので、通常の上場企業よりも、上場に係るコストの負担が大きくなると考えられます。
資金の二重取り
親子上場により、親会社が子会社も含めた企業価値を裏づけとし、上場時に市場から資金を集め、さらに子会社上場で再び資金を得る、資金の二重取りが行われる可能性があります。東京証券取引所も、新規上場ガイドブックの中で、「親子上場は新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられ、上場審査では慎重に対応する」と説明しています。
子会社利益の外部流出
子会社における株主の意向が経営に反映され、得た利益の一部が外部流出することで、グループ全体の利益が配当として流出してしまうことが懸念されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、親子上場について解説しました。親子上場は親会社が筆頭株主であるため、親会社の利益が優先されやすいというガバナンス上の問題があることは否めません。
しかし、売買や配当で利益を得たい個人の投資家であれば、必ずしもデメリットだけではなく、投資機会が増えると考えることもできますので、。メリット・デメリットをしっかりと理解し、適切な判断をもって投資に臨むことが重要だといえます。