エンジェル税制とは?仕組みや利用手順について解説
エンジェル税制という制度があることをご存じでしょうか。エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するため、平成9年の税制改正で新設された税の優遇制度のことです。この制度を利用すると、ベンチャー企業と投資家の双方に確実なメリットがあります。
今回は、エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)について解説していきます。
エンジェル税制とは?
一定の要件を満たした企業に対して、個人が投資を行った場合、投資時点と売却時点で税制上の優遇措置を受けられる制度のことです。眠っている個人資産を将来有望なベンチャー企業の資金へ循環させることによる経済活性化を狙いとして作られました。
エンジェル税制の仕組みについて
ベンチャー企業がエンジェル制度を適用するためには、経済産業局への申請が必要です。制度の対象であると認められたベンチャー企業に投資する個人投資家は、大きく分けて2種類の優遇措置を受けられます。
1つは投資の時点で受けられるもの、もう1つは株式売却の時点で受けられるものです。個人投資家は、投資したベンチャー企業から必要書類を受け取り、確定申告の際に添付することで税制の優遇措置を受けることができます。詳しくは以下で説明します。
投資時点で受けられる優遇措置
まずは、個人投資家がベンチャー企業へ投資した時点で受けられる優遇措置についてです。優遇措置AもしくはBから選択できます。ただし、優遇措置Aは平成20年4月1日以降の投資が対象となります。
優遇措置A
設立5年未満の企業への投資が対象で、ベンチャー企業への投資金額から2,000円を差し引いた金額がその年の総所得金額から控除されます。ただし、総所得金額×40%か1,000万円(令和3年1月1日以降は800万)のいずれか低い方が控除対象の限度額です。
優遇措置B
設立10年未満の企業への投資が対象で、その年の、他の株式を売買して得た利益から、ベンチャー企業へ投資した金額のすべてを控除します。控除対象となる投資金額に限度はありません。
未上場ベンチャーの株式を売却した年に受けられる優遇措置(売却損失が発生した場合)
未上場ベンチャー企業の株式の売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)することができます。
※ベンチャー企業が上場しないまま、破産、解散等をして、株式の価値がなくなった場合にも、翌年以降3年にわたって損失の繰越をすることができます。
優遇措置を受けるための要件とは?
エンジェル税制の優遇措置を受けるには、企業と個人投資家それぞれがそのような要件を満たしていなければならないのでしょうか。
企業が対象となるための要件
設立してからの経過年数、研究開発に従事する社員の人数など、いくつかの要件があります。事前確認制度を利用すれば、対象であるかどうかを確認できます。対象企業として認められれば、経済産業省のホームページに掲載されるため、個人投資家へのアピールにもつながります。
個人投資家が対象となるための要件
まず、金銭の支払いにより対象企業の株式を取得している必要があります。他人からの譲渡株式などは対象となりません。また、投資する企業が同族会社の場合は、持ち株割合の上位3位の株主グループの持ち株割合を順に加算し、50%以上となったときの株主グループに属していないことが要件となります。
エンジェル税制を利用するメリット
- 企業のメリット
- 個人投資家のメリット
個人投資家(エンジェル)からの投資を受けるチャンスが増えます。
投資した年に所得税の優遇措置を、株式を売却して損失が発生した場合に所得税および住民税の優遇措置を受けることができます。
エンジェル税制の利用手順
エンジェル税制の利用手順は以下になります。
- ①投資を受けた企業が確認書の発行申請
- ②エンジェル税制の対象かどうか?を審査
- ③エンジェル税制の対象確認書が経済産業省大臣から交付される
- ④投資を受けた企業が確定申告時に必要になる書類を個人投資家に交付
- ⑤個人投資家は企業から交付された書類で確定申告
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)について解説しました。
エンジェル税制は個人投資家にとっては、投資時点で出資にも関わらずに損金参入ができるメリットと売却時点で譲渡益の全額が控除される非常に大きなメリットがあります。エンジェル税制が定着すれば、中小企業の資金調達方法として「エンジェル投資家」というものがより大きなウェイトを占めてくるはずです。