税金を滞納している場合、資金調達は可能なのか?資金調達の種類別に解説
税金は義務ですので、必ず払う必要がありますが、中小企業経営者、または個人事業者の方の中には、資金繰りがピンチのときしかたがなく税金を滞納してしまった方もいることでしょう。しかし、税金を滞納してしまうと、資金調達の方法が限られてしまい、ますます苦しい経営が続いてしまうことになりかねません。
そこで今回は、税金を滞納している場合、資金調達は可能なのか否かを、資金調達の種類別に解説していきます。
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そもそも税金を滞納するとどうなるのか?
税金は、期限までの納付が義務づけられています。これを守らなかった場合は延滞となり、さまざまなペナルティが課されます。これは、個人でも会社でも同様です。では、税金を滞納してしまった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
延滞税がかかる
税金を滞納すると、納期限を超えた日から納付するまでの日数分の延滞税が発生します。延滞税は、納付しなければいけない額×延滞税率×延滞日数を365日で割って算出されます。延滞税率は、延滞期間が2ヵ月以内か、2ヵ月を超過するかによって変わります。
2ヵ月以内の延滞にかかる延滞税は7.3%、もしくは銀行の貸し出し金利をもとに算出した特定基準割合に1%を足した率のうちの低いほうで、2ヵ月を超えた分にかかる延滞税は14.6%、もしくは銀行の貸し出し金利をもとに算出した特定基準割合に7.3%を足した率の低いほうと定められています。
そもそも延滞をしないほうがいいことはもちろんですが、2ヵ月を超えると延滞税が約2倍になってしまうことから、早期の納付を目指すことをおすすめします。ただし、修正申告などによる延滞が起こってしまった場合など、やむをえない理由による延滞の場合は、延滞税がかからないケースもあります。不明点がある場合は、税務署に確認してみましょう。
督促状・差し押さえ
納期限を過ぎても税金の納付がない場合は、督促状が送られてきます。督促状には、納めるべき税額が記載されています。上記の延滞税が加算された金額が記されているはずなので、督促状が届いてしまった場合は、すみやかに内容を確認して納付しましょう。
督促状が届いた後も税金の滞納を続けた場合は、財産の差し押さえをされる可能性があります。差し押さえは、税金を滞納した会社や個人の財産状況の調査によって、納税にあてることのできる財産を保有しているとみなされた場合に行われます。差し押さえの対象となるのは、会社の場合、保有する預金や株式などです。事業に必要な設備などは対象となりません。
差し押さえに遭うまで税金の納付を放置すると、会社経営者としての信用を失います。どんなに遅くとも、督促状が届いた時点で税務署に行き、今後の納税についての相談を行いましょう。たとえ今すぐ納めることが難しかった場合でも、納付の意思があることを見せて誠実な対応を行えば、いきなり財産が差し押さえられるようなことはありません。
財産の隠蔽は刑罰対象になる
差し押さえを回避しようとするあまり、預金を隠したり、会社の財産を処分したりすることは、国税徴収法に違反します。刑事罰の対象になることもありますので、軽率な行動をとらないことをおすすめします。
税金を延滞していても、隠し立てをしたり督促を無視したりするような悪質な滞納と、納付する意思はあるが現金の融通が難しいと伝えた上での滞納では、税務署の対応も異なります。資金不足で税金を納付できない場合は、正直に相談してみましょう。
税金を滞納しそう・してしまった場合の対処法
止むを得ず滞納してしまった、またはしてしまいそうな場合は、融資希望の有無に限らず以下の対処をしておきましょう。
早急に税務署に連絡する
税金を納めたいけれども資金繰りが悪くできない場合は、税務署に相談しましょう。税金を一時的に納めるのが難しい場合は、税務署に申告を行うと財産の換価(売却)や差押えなどの猶予(換価の猶予、納税の猶予)を受けられることがあります。
例えば、以下の条件を満たすと差し押さえの猶予が受けられる可能性があります。
- 納税することで、事業の継続や生活が難しくなる
- 納税する意思がある
- 差し押さえの猶予を受ける以外に滞納している税金がない
- 納付期限から6か月以内に申告書が提出されている
- 提供できる担保がある
融資を受けている場合はリスケの相談をする
リスケ(リスケジュール)とは、融資の返済が困難になった場合、融資元に対して毎月の返済額の調整や元金利の返済猶予を依頼することです。税金を滞納しそう・してしまったときにすでに融資を受けている場合は、融資先へのリスケをすぐに申し出ましょう。
税金滞納中でも融資などの資金調達は可能なのか?
税金を滞納している会社は、資金繰りがうまくいかず、手元資金不足に陥っているケースが多いものです。資金を調達する際の一般的な方法には融資がありますが、税金を滞納している状態でも融資を受けることはできるのでしょうか。
ここからは資金調達の種類別に解説していきます。
銀行・日本政策金融公庫からの融資
銀行や日本政策金融公庫の融資は、税金を滞納したままでは、審査に通る可能性は低いといえます。日本政策金融公庫は、100%政府出資の金融機関です。国税を滞納している相手に融資を行うということは考えにくいでしょう。
また、銀行に中小企業が融資を申し込む際には、多くの場合は信用保証協会の保証を受けることになりますが、信用保証協会はおもに地方公共団体の援助で設立された公的機関であり、税金を滞納している企業に対して、保証を行う可能性は低いと考えられます。
特別な理由があって延滞が起こっている場合や、信用保証協会を通さないプロパー融資を利用する場合など、まれに融資が受けられることもあるようですが、一般的な中小企業の融資では可能性は低いといえるでしょう。
銀行カードローン
銀行カードローンとは、銀行が行っている融資の一種ですが、信用保証協会の保証は必要ありません。ほとんどの場合、代表者が連帯保証人となることで利用できます。そのため、銀行カードローンは、通常の銀行融資とは審査の方法や基準が異なることから、税金を滞納していたとしても、業績に問題がなければ利用できる可能性があります。
ただし、銀行カードローンは金利が5~15%程度と、日本政策金融公庫や信用保証協会を通した融資に比べて高くなっています。高利で借入れを行ってしまうと、その後、返済に困って余計に資金繰りがきびしくなる可能性もあります。
ノンバンクからの融資
ノンバンクとは、消費者金融や信販会社など、銀行以外の金融機関を指す言葉です。ノンバンク系の金融機関からの融資では、銀行カードローンよりもさらにスピーディーに資金を調達することができます。また、銀行からの融資に比べて審査も緩いことから、たとえ税金を滞納していたとしても利用できる可能性が高いでしょう。
ただし、ノンバンクからの融資金利は、銀行カードローンよりも高く、18%前後の場合がほとんどです。ノンバンクの融資を事業資金目的で利用するのは、よほどの理由がない限り避けるべきです。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売買・譲渡することで、資金を現金化できる資金調達方法です。融資ではなく、資産の譲渡になるため、税金の滞納があっても利用できる可能性が高いでしょう。また、銀行融資を断られた場合や赤字決算の場合でも、自社よりも売掛先企業の信用力が重視されるため、利用できるという特徴があります。
取引先に知らせずに取引を行う2社間ファクタリングの場合、手数料はおおよそ10~30%程度です(実際の手数料は、取引先の与信や利用状況等によって変わります)。審査にかかる日数は短く、早ければ即日~3日程度で売掛債権を現金化することができるでしょう。なお、ファクタリングは融資とは異なり、あくまでも売掛債権の範囲内での資金調達方法です。売掛債権の入金時にすべての取引が完了しますから、返済が長期化して負担になることもありません。
まとめ
税金を滞納している場合、利子の低い銀行融資等は受けられない可能性が高いでしょう。滞納が常態化すると、融資が受けられないという以外にも、さまざまな問題が起こります。まずは、ファクタリングや銀行カードローンなどを活用して滞納を解消するとともに、今後の資金繰りについて、あらためて資金計画を練ることをおすすめします。
ただやみくもにファクタリングや銀行カードローンなどを利用すると、先々の資金繰りが大変になる可能性がありますので、事前に税理士などの専門家と相談しておくと良いでしょう。