中小企業が活用できる資金調達『少人数私募債(私募債:しぼさい)』について解説
起業直後や中小企業の資金調達方法について、日本政策金融公庫などの融資やベンチャーキャピタルなどの出資が代表的ですが、それ以外に少人数私募債(私募債)という方法があります。
今回は、少人数私募債(私募債)について解説していきます。
少人数私募債(私募債)とは
『小規模な社債』
少人数私募債(私募債)とは、少数の投資家に向けて発行される社債のことをいいます。少数の投資家とは、親族、取引先、従業員、会社役員、友人・知人、顧問の専門家等です。
そもそも社債とは、会社が有価証券である債券を発行し、それをもとに不特定多数の人々から長期間にわたって多額の資金を借り受けるものです。日本政策金融公庫や銀行などの金融機関から融資を受けると、返済スケジュールを立てて毎月返済していきますが、社債は償還期に元金を一括で償還するという特徴があります。
返済期間が長く(基本的に2年~7年程度)、特定の返済時期に一括で支払う借入金と把握しておきましょう。
少人数私募債の条件について
具体的には主に3つの条件があります。
社債総額を1口の金額で割ったとき、口数は50未満になること
少人数私募債は発行口数が50口未満である必要があります。
例えば、500万が社債総額だった場合、1口の金額上限は、おおよそ10万2,020円となり、基本的に少人数私募債の場合、1億円が総額の上限になりますが、その場合には1口204万円ほどになります。
社債引受人の総数が50人未満であること
少人数私募債は、社債の引受人が50人未満である必要があります。つまり49人以下でなければならないということです。社債発行後もそうでなければなりません。多くの人に社債を勧誘することはできません。取引先や顧問先など会社が引受人となることもありますが、この場合には1社を1人としてカウントします。
譲渡制限を設けること
発行後も50名未満を継続しなければなりませんので、譲渡制限を設ける必要があります。
発行後に複数の人に分割譲渡されてしまった場合には、発行後の引受人の数が50人以上となってしまう可能性があります。この可能性を排除するために、社債の発行後の譲渡は、「一括譲渡しかできない」などという譲渡制限を設ける必要があります。
誰に買ってもらうのか?
少人数私募債(私募債)は、自社で購入者を探す必要がありますが、基本的に縁故者(親族など)や友人・知人に社債を購入してもらうことが多いです。
社債という形をとることによって、お金を貸す側としても覚書や口約束でお金を貸すよりもお金が返済される可能性が高いということもありますし、利息も購入時に確定しているため、返済が履行される可能性が高いです。その他としては、企業から社債を購入してもらうケースもありますが、余程、信用があるか応援してもらっているかという事が言えます。
最後に、少人数私募債(私募債)は個人事業主は適用できず、法人でなければならないという条件や引受人が金融関係のプロ(銀行員や証券会社など)の場合はその社債は私募債として扱われません。
少人数私募債のメリットデメリット
メリット
- 直接的な募集なのでコスト削減できる(監査機関や証券会社への依頼はなし)
- 一括償還により資金返済計画が立てやすい
- 担保・保証は不要
- 短期間での発行が可能
- 償還期間をこちらで決定できる
デメリット
- 一括償還のため償還時の負担は大きい(基本2年から7年が償還期限)
- 事業の業績不振により、万一、償還できない状況になれば、今後の引受人や引き受け会社などへの関係が悪化してしまう
- 金利を高く設定される可能性がある
まとめ
重要なことは融資者から募集したお金を使いますので、償還期限までにどのように会社を大きくしていくのか、返還していくのかを納得していただく為の事業計画を立てる事です。安易に考え、計画をおざなりにし、あいまいな説明をして資金調達をすれば、後々トラブルになる可能性があるので注意が必要です。
少人数私募債(私募債)を検討している人は、債券を買っていただく方に応援していただける信頼関係が築けるように、しっかりと事業計画書を作成するようにしましょう。