起業・開業時の資金調達方法別メリット・デメリットをご紹介
起業・開業するためにはお金が大事になってきます。主な資金調達方法を分類すると、個人借入、出資、融資、補助金などがあります。
今回は、起業・開業時の資金調達方法について、それぞれのメリット・デメリットについてお知らせしますので、資金調達を検討している人は参考にしてみて下さい。
起業・開業時の資金調達方法【個人借入】
個人での借り入れ(消費者金融のキャッシング)
消費者金融とは、賃金業取扱主任者という国家資格を取り、賃金業法という法律に基づいて財務局と都道府県知事の登録を得た民間の貸し付け業者です。「アコム」「プロミス」「アイフル」という名前、聞いたことがあるとおもいます。これらは全て消費者金融です。アコムやプロミスはCMなどでもおなじみで、その知名度は群を抜いており、人気の高さが特徴といえます。
また消費者金融のキャッシングとは、消費者金融が発行している使途自由のカードローンのことです。昔は消費者金融といえばキャッシングで通っていましたが、最近では商品名も「カードローン」に統一されているものがほとんどです。カードローンとキャッシングは同じ意味をあらわすことが多いので覚えておくと混乱せずに済むでしょう。
- 個人の信用で容易に申し込むことができる
- お金が必要なタイミングで借りられる
- 利息が高い
- 他のローンを組む際、審査に影響する
- 契約した利用限度額によって金利が異なる
個人での借り入れ(銀行カードローン)
銀行が発行しているカードローンのことです。都市銀行だけでなく、地方銀行やネット銀行などでもカードローンが提供されています。銀行では住宅ローンやマイカーローン、目的別ローンなども取り扱いされていますが、使いみちを問わないローンとしてカードローンが提供されています。そしてカードローンを専門に扱う消費者金融とは違い、銀行業や金融業のかたわらにカードローンを取り扱っています。
消費者金融の賃金業法とは違い、銀行には銀行法という法律が適用されています。それぞれ適用される法律が違うということも覚えておきましょう。また銀行カードローンは、住宅ローンやマイカーローンのように使い道が定められていないため、使い道は自由です。この点は消費者金融のキャッシングと何ら変わりません。
- 個人の信用で容易に申し込むことができる
- お金が必要なタイミングで借りられる
- 消費者金融より高額の借り入れができる
- 利息が高い
- 他のローンを組む際、審査に影響する
- 契約した利用限度額によって金利が異なる
親族・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
- 他人資本でも経営権を保持しやすい
- 自由な条件で契約をしやすい
- 身内とリスクを共有することになる
- 経営難や返済が難しい場合、関係が壊れる可能性がある
起業・開業時の資金調達方法【出資】
自己資金
自己資金とは『誰にも返す必要がないお金』です。自分の給料から少しずつ、蓄えたお金や、返済義務がない親族からの支援金は自己資金とみなされます。
一方で、借金をして手に入れたお金は、自己資金とはいいません。いつか返さなければならないからです。親族から渡されたお金であっても、親族が明確に贈与の意思を示していなければ自己資金とはみなされない可能性があります。いつか親族から返済を求められるかもしれないからです。たとえ、形式的に贈与契約書があっても、親族の財務状況が悪ければ、将来、返してくれと言われるかもしれないので、自己資金とはみなされないこともあります。「返さなければならないか否か」が判断の分かれ目になってきます。
- 経営権を保持できる。経営の自由度が高い
- 金利負担がない
- 資金量が限られる
- 事業清算をした場合、自分の資産を失うことになる
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、起業家のスタートアップを助ける個人投資家です。エンジェル投資家の多くは、現起業家、引退した起業家、M&A・IPOなどで会社を売却して資金を手に入れた実業家達になります。
通常、起業後まもない時期は、資金調達の面で苦労を強いられます。起業時は説明できる実績が 無いため、銀行や金融機関などの融資やベンチャーキャピタルの出資を受けにくいからです。こうした資金調達の問題を解決してくれるのが「エンジェル投資家」の役目です。
エンジェル投資家には、投資の見返りとして、株式などを提供します。エンジェル投資家は、友人などのケースは別ですが、何の利益も見込めないようなベンチャーに対しては基本的に投資はしません。 当然ですが、投資した企業が倒産すると資金回収は出来ませんので、通常の投資と比較すると極めて高いリスクを負うことになるわけです。
- 資金返済の義務がない
- 経営のアドバイスがもらえる
- コネクションから紹介がもらえる
- 持ち株比率(起業家の持ち分比率が低ければ(経営権剥奪など)経営で問題を抱えることや、会社売却で自分自身が損をする可能性がある)
- 経営に関与してくる場合がある
ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタル(VC)とは、ハイリターンを狙った投資を行う投資会社のことです。未上場の中でも、特に成長性が高いと見込まれる企業に対して出資(投資)を行います。
ベンチャー企業の株式などを引き受けることによって投資をし、その企業が株式公開するなどしたのち株式などを売却し、キャピタルゲイン(株式等の当初の投資額と公開後の売却額との差額)を獲得すること目的としています。一般的には、技術が革新的であったり、アイデア、ノウハウが優れていなければベンチャーキャピタル(VC)からの投資を期待するのは難しいのが現状です。
投資する資金については、自己資金を活用して投資するパターンと、投資ファンド(投資事業組合)を設立して投資家から資金を集めて、ベンチャーキャピタルがその投資ファンドのマネージャーとして未上場企業に投資するパターンがあります。
- 資金を得られ、返済義務がない
- 人脈などのネットワークが広げられる
- 経営ノウハウを得られる
- 経営の主導権を握られてしまう可能性がある
- 投資打ち切りのリスクがある
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、群衆(Crowd)と資金調達(Funding)を組み合わせた造語で、インターネット上で不特定多数の人から資金を集める仕組みのことです。個々の出資額がわずかな額でも、多くの人から出資を募ることでまとまった資金を得ることができます。利用するクラウドファンディング会社によって条件や手続きは異なりますが、 資金の使い道は、新規事業の立ち上げや、ものづくり、社会貢献、新規商品のPRなどさまざまな用途があります。
クラウドファンディングには大きく分けて、金銭以外のモノやサービスを特典として受けることができる「非投資型」と、金銭的なリターンを得る「投資型」の2つがあります。まず非投資型には「購入型」と「寄付型」があり、投資型(金融型とも呼ばれる)は「融資型(ソーシャルレンディング)」「ファンド投資」「株式投資型」に分類ができます。
- 現金以外でもリターンを設定できる
- 完全成功報酬制
- 宣伝効果が高い
- 自己資金がなくても利用可能
- 目標額が集まらない可能性がある
- 事業が頓挫すると社会的信用を失う
- アイディアが他人や他社に盗用される可能性がある
起業・開業時の資金調達方法【融資】
制度融資(信用保証協会付融資)
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
- 起業・開業前でも申し込み可能
- 無担保・無保証(借入金額による)※無保証とは第三者保証が不要という意味
- 行政が支払利息、保証料の一部補助をしてくれる(行政により内容は異なる)
- 経営相談にも乗ってくれる
- 申込みから実行まで時間がかかる(1~2ヶ月程度)
- 支払利息とは別に保証料の負担が発生
- 借入できない業種やケースがある
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
- 起業・開業前でも申し込み可能
- 無担保・無保証(借入金額による)※無保証とは第三者保証が不要という意味
- 1ヵ月程度で着金可能(制度融資より早い)
- 借入できない業種やケースがある
マル経融資
マル経融資は、商工会議所の推薦により受けられる融資です。1年以上の事業実績が必要。金利が低いため、借り換えも有効になります。通常受けられる融資の中で最も低い水準の金利で、制度融資や公庫融資で資金調達し起業した場合、1年後にマル経融資の審査を受け、借り換えができるように計画するとよいでしょう。
- 利息が低い
- 無担保無保証
- 起業・開業後1年経過が必要
起業・開業時の資金調達方法【補助金】
補助金
国や自治体、公的機関が設けている補助金制度を活用する方法もあります。補助金は融資制度とは異なり、返済義務がない点が大きなメリットです。一方で、補助を受けるためには一定の条件があり、実際に資金を確保することは簡単ではありません。申請しても承認が下りず、補助や助成を受けられないということも珍しくないため、他の資金調達方法も検討しながら同時進行で計画を進めることが現実的です。
また、申請の手続きは非常に煩雑なため、申請のために事務作業の時間をかなり長めに割く必要も出てきます。そして採択されても着金が半年から1年後になる為、基本的に事業運転資金の資金調達方法としては難しい面があります。
- 起業前・起業後どちらでも申込みできる(起業時がいつかによって申請不適となるので注意)
- 補助金なので基本的に返済不要
- 常に募集しておらず、申込み期間がある
- 採択率は低い公募がある
- 補助対象経費の種類は限定されている
- 申請する書類が多く複雑
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、起業・開業時の資金調達方法について、それぞれのメリット・デメリットについてお知らせしました。
様々な資金調達方法をお知らせしましたが、基本的に起業・開業時には銀行からの直接融資や出資(VCなど)を受けられるケースはほとんどありません。
起業直後でも資金調達方法として可能なのが「制度融資(信用保証協会付融資)」や日本政策金融公庫です。低金利、無担保無保証で融資を受けられるので、起業・開業したらまず申し込みをしておくことをおすすめします。