何故、有名企業は上場しないのか?
株式会社として起業する場合には「上場」を目指すか「非上場」のままかは経営者として検討しなくてはいけない事案です。イメージとては「上場」の方がいい会社で「非上場」の方が良くない会社と認識している方もいるかと思いますが、決してそうではありません。
そこで今回は、経営の立場からのそれぞれメリットとデメリットや有名企業が上場しない理由について解説していきます。
上場とは?
上場とは、株式会社が自社の株式を「証券取引所」に公開して、売買されることができるようにすることをいいます。
上場するためには様々なハードルが設けられているためであり、つまり上場することは、企業の価値を判断する一つの重要な指標だといえます。そのため、例えばベンチャー企業が会社経営の目標として上場を掲げていることも多くあります。
上場することの最大のメリットは、資金調達がしやすくなることです。非上場のままで株式を売りに出すためには、自分から株式の買い手を探さなければいけません。そこで上場して株式をマーケットに公開すれば、一般投資家などから買い手を募ることができるようになります。また、前述のとおり株式会社が上場するためには証券取引所による審査を受ける必要があります。その分、上場していることは社会的信用度を高める要因になり、これも大きなメリットといえるでしょう。
一方で、証券取引所への上場には「コスト」と「リスク」といったデメリットが存在します。まずコストとしては、証券取引所に上場した状態を保つための費用が必要です。証券取引所に支払う「上場料」や、上場に必要な監査を行う監査法人に支払う報酬、あるいは株主総会の運営費用などがこれに該当し、比較的規模の小さい企業であっても年間で数千万円から1億円ほどかかるとされています。またリスクとしては、会社の株主が第三者の手元に渡ることで会社としての意思決定に支障が生じたり、あるいは会社そのものを買収されてしまう可能性も出てきたりします。
- 東京証券取引所(東証)
- 名古屋証券取引所(名証)
- 福岡証券取引所(福証)
- 札幌証券取引所(札証)
また、一番大きい「東京証券取引所(東証)」の上場企業は以下の証券取引市場のどこかに自社の株式を公開しています。
- 東証1部
- 東証2部
- マザーズ
- JASDAQ(ジャスダック)
株式市場の中でもっとも上場するのに厳しい条件が定められています。東証一部には大企業や有名企業なのが数多く上場しており、東証一部を目指す企業はまず「東証二部」から上昇を申請する必要があります。
東証二部は、東証一部よりも条件が緩和されることから上場している企業は中堅企業が中心となっています。
1999年に開設された比較的新しい株式市場です。ベンチャー企業に向けた株式市場となっています。
マザーズ同様、ベンチャー企業向けの株式市場です。JASDAQは「スタンダード」と「グロース」という市場に分けられており、それぞれの対象企業や条件が異なります。
非上場とは?
非上場企業とは、証券取引所に上場していない株式会社のことです。企業の規模や業績にかかわらず、誰もが知る有名企業にも非上場企業があります。
非上場のメリットは、株主の意見に左右されない経営ができる事です。近年では自らの意見を表明し、積極的に経営に関わり改革に迫る「物言う株主」が増えています。M&A、低収益事業の売却、コスト削減、手元資金の活用、改革に消極的な役員の退任、改革推進派の役員選任などを要求する傾向があります。この目的は、経営効率を高めて株価や配当を引き上げることです。
非上場のデメリットとしては、資金調達の手段が限られたり、経営トップの暴走を防ぐことが難しいなどが挙げられます。
- サントリーホールディングス
- IKEA(イケア)
- 読売新聞グループ本社
- ジェイティービー
- 佐川急便 その他多数
上場と非上場の違いについて
上記でも記述していますが、上場と非上場との違いは、株式をマーケットに公開しているか否かです。たまに「株式を売買できるか否かの違い」という勘違いがありますが、非上場はあくまで株式を公開していないだけであり、非上場であっても株式を売買することは可能です。
ちなみに、上場していない株式は「未公開株」や「非公開株」などと呼ばれています。
何故、有名企業は上場しないのか?
上記でもお知らせした通り、上場することで株式により資金調達がしやすくなるというメリットがあるにもかかわらず、あえて上場しない大手企業もたくさんあります。大手企業なら上場のための条件も簡単にクリアできるはずなのに、なぜ上場しないのか。主な理由として挙げられるのが以下になります。
- 株主から経営に対して口出しされるのが嫌(株主によって経営が左右する)
- 株を買い占められることでの買収のリスク
- 上場維持のためのコストがかかる
もちろん企業によって理由は異なりますが、上場するデメリットからこのような意見を持つ企業もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、経営の立場からの「上場」「非上場」それぞれメリットとデメリットについて解説しました。
株式会社が上場するにはとても高いハードルがありますから、経営者が上場することを目指したり、上場企業で働くことを目指すことには、目標設定としては意味のあるものといえます。一方で、非上場であっても社会的信用度や認知度が高い優良企業は多く存在しますし、逆に上場企業であっても、この先ずっと安泰というわけでもありません。
経営者として上場か非上場かの判断をするときや、あるいは働き手として会社を選ぶ際には、上場か非上場かだけではなく、それらがもたらすメリットやデメリットまできちんと考えた上で、判断することが重要です。