金融機関から融資を断られる、減額されてしまう理由とは?
日本政策金融公庫や民間の金融機関は、起業家や中小企業向けに融資を積極的に行っていますが、融資を申し込みしても、ケースによっては融資を断られたり、申請金額から減額となることもあります。
今回は、融資を申し込みした際、金融機関から融資を断られる、または減額されてしまう理由について解説していきます。
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金融機関は、融資NGの理由を教えてくれない?
融資で断られた原因さえ分かれば改善のポイントが分かりますので、断る理由を知りたいところですが、基本的にどこの銀行も本当の融資の謝絶理由を教えてくれず、担当者からは「総合的な判断」と濁されてしまいます。
なぜ、銀行は具体的な謝絶理由を教えてくれないのでしょうか。主に理由は以下が考えられます。
- 原因が1つだけではない可能性がある
- 銀行しか知りえない情報があるため
- 本当のことを伝えてトラブルを避けるため
本当の理由を教えてもらえないので、融資を申込する前に融資が受けられない、減額される理由を知っておくことが大切になります審査基準が外部に漏れる可能性があるから
融資が受けられない、減額される理由とは?
では、融資が受けられない、減額される理由について「事業(事業計画)」「経営者」「金融機関」別で説明していきます。
1.事業(事業計画)
事業収支が取れていない
そもそも事業の収支が赤字であれば返済原資が捻出できないため、融資が断られる、減額される可能性が高まります。実際、事業収支が取れていない場合は融資が断られる、減額となる理由として、最も多い理由のーつです。
ただし、少し難しい話になりますが、たとえば減価償却費といった非資金項目(実際にキャッシュアウトしない支出項目)によって赤字となっている場合は、返済原資が不足するわけではないので、さほど大きな問題になることはありません。金融機関は返済してもらえるか否かを審査するわけですから、会計上の損益よりも、キャッシュフローで黒字を確保しているかどうかが重視されます。
必要な許認可がない
事業によっては、事業を行う前に許可や認可などを取得しなければなりません。必要な許認可を取得していなければ、コンプライアンスに厳しい金融機関が融資をすることはありません。登録や届出などは特に注意が必要です。また、有効期間が定められているものについては、更新時期にも留意しましょう。
事業計画書の完成度が低い
新規事業の立ち上げを目的として融資を受ける場合、決算書とともに事業計画書の提出を求められます。その事業計画書の完成度が低いと、新規事業が成り立たないと評価されてしまい、融資が断られる、または減額される対象となります。事業計画書は相手の知りたい内容を、的確に、かつ論理的に記載しなければなりません。審査担当者に「この事業はうまくいく」と納得させる事業計画書を作成しましょう。
事業内容が斬新
金融機関はベンチャーキャピタルとは違いリスクマネーの融資には慎重です。金融機関の利益はインカムゲインとよばれる利息収入であり、毎月、元金と利息をしっかり返済してくれる事業者に融資を行います。つまり、石橋を叩いて渡る堅実さが銀行に評価されます。一方、斬新な新規事業で当たれば一獲千金という事業は好まれにくいことを知っておきましょう。
過大投資
事業規模に比べて設備や新規事業への投資額が大きすぎると判断された場合、融資を断られることがあります。過大投資は、車の運転から飛行機の操縦にグレードアップするようなもので、飛行機を動かせるだけの組織力(操縦士、CA、整備士等)や資金調達力が見込めないと融資は実行されません。
融資の資金使途が不適切
決算状況に問題がない場合でも、融資の資金使途が不適切であると融資が断られます。例えば社長の個人的な車の購入費や子供の学費などの教育費、他社への転貸資金、事業に関係のない費用など、資金使途が不適切であるとして、融資対象になりません。
粉飾の疑い、あるいは粉飾している
決算を粉飾していると、当然、新規融資はNGとなります。そればかりか、既存の融資まで引き上げにかかってくるので、粉飾だけはNGです。粉飾の疑いをもたれないよう、普段から常に気を付けましょう。もし疑われたら、きちんと説明ができるよう、決算処理の内容をきちんと把握しておきましょう。
財務内容が悪い
基本的に、財務内容が悪いと銀行から融資を受ける事は難しくなります。銀行融資は財務内容を中心に審査をします。財務内容を判断する指標は主に決算書(貸借対照表、損益計算書等)の内容を言います。つまり、決算書の内容が悪いと融資を断られる可能性が高くなります。
2.経営者
返済を遅延している
返済が延滞したりきちんとできていない場合は融資の対象になりません。金融機関が一番嫌う経営者は、「お金にだらしない」ことです。返済見込みが低いと判断され融資が断られる可能性があります。
商品の仕入代金の支払いが遅れると商品を卸してもらえなくなります。また、店舗の家賃が遅れたりすると、賃貸借契約を更新してもらえないことがあります。金融機関も同じで、定められた期日に返済をしないと、次の取引(融資)に支障が出るのは当然のことです。
ブラックリストに名前がのっている その他金融事故がある
自己破産など債務整理などをしていると、融資の審査が厳しくなります。目安として5年以内に自己破産などの債務整理をしていると融資は難しいと考えるべきです。融資を受ける前に、金融事故の有無を確認できるCIC(指定信用情報機関)などの信用情報機関での確認をしておきましょう。
カードで複数キャッシングしている
金融機関は個人信用情報を取得する場合もあるので、誰がどれほどの負債を抱えているか把握することができます。そのときクレジットカードから複数キャッシングしていると、高い資本コストを払っていることや、個人の資金繰りに困っているとみなされ、融資が断られることがあります。必要以上に借入を増やさない方がいいでしょう。
消費者金融から借入している
通常、消費者金融の利率は、銀行が行っている一般的な融資利率の5倍以上が適用されています。資金調達に係るコストを専門的に「資本コスト」と呼びますが、高い資本コストを払っている事業者は金融機関に敬遠されます。消費者金融からの借入は避けましょう。
過去に金融機関とトラブルがある
金融機関の担当者とは決して喧嘩をしてはいけません。銀行のような大きな組織には少なからず変わった人もいるので、たとえそのような人が自分の担当になったとしてもトラブルになるほどクレームを言ってはいけません。大人の対応を心がけましょう。金融機関は転勤サイクルが早いですから、2~3年もすれば異動になり、顔を合わせずに済みます。
未申告
申告義務があるにも関わらず、確定申告を行っていない場合、融資を受けることは難しいです。金融機関はしっかり返済してもらえるか否かを審査しているわけですから、財務状況がわからない状況だと審査の土俵にも上りません。
また、未申告は脱税の可能性が生じるため、コンプライアンスを重視する金融機関は貸し手としての社会的責任があるため、未申告企業に融資をすることはありません。
面接での説明&マナーが悪い
融資の申し込みをした後は、融資担当者との面接があります。この面接では、具体的な融資希望理由や、会社のことや業績などについて聞かれますが、それ以外にも融資を受けようとしている事業者の人柄や会社に対しての思いを見られます。ここでしっかりと説明ができなければ、融資は厳しくなります。上手く話そうということではなく、話している様子や伝えようと思っていることを自身の言葉で伝えることで、融資担当者に伝わります。更に面接時の印象や態度、そして身だしなみなどのマナーも見られていますので、注意しましょう。
事業の経験や実績がない
金融機関の中には、経営者の同業種での経験年数を条件にしているものもあります。これは、起業しようとしている事業に詳しかったり、経験豊富であったり、実績を出していた方が、きちんと返済してくれる可能性が高いと判断されるためです。
実際のところは全くの業界未経験者が成功する例もありますが、特に創業融資の場合は、申込人の過去の経験や実績を踏まえた審査となるため、業界未経験者の審査は厳しくなります。
3.金融機関側
融資要件を満たしていない
これは当たり前の事ですが、金融機関の融資要件を満たしていないと、融資審査に通ることはありません。代表的な理由は、資金使途が事業用以外、必要な許認可を取得していない、金融機関や信用保証協会が定めている対象業種外、反社会的勢力であるなどが挙げられます。
自己資金が少ない
創業融資の審査においてとても重要な項目です。融資制度によっては自己資金要件を設けていない制度もありますが、実務上は自己資金が少ないと不利になります。ベストな自己資金の貯め方は、長い期間をかけて毎月一定金額を貯め続けることです。融資の返済も長期間に渡ります。きちんと貯められる人は返済できる人と評価されます。一方、出所のわからないお金や一時的に借りたお金については自己資金としてみなすことができませんので注意が必要です。
創業融資は一般的には自己資金の2~3倍程度が相場とされています。もし、起業時に自己資金の5倍や10倍の金額の融資を受けたいと考えているようならば、以下の2つを満たしていると近づく可能性が高まります。
・これから始める事業での経験、実績、スキル、人脈
・これから始める事業で既に一定以上の売上見込みがある
与信額がオーバーしている
与信とは「信用を与えること」です。つまり、与信額とはいわば金融機関が事業者ごとに定めている融資限度額です。金融機関はそれぞれの基準に従って、この事業者はこのぐらいの金額まで融資がOKという融資枠を定めています。
たとえば、ある事業者の与信額が3千万円と設定されていて、その事業者から3千5百万円の融資の申し込みがあった場合は5百万円の減額となる、といった考え方です。与信判断は銀行ごとに定められているものなので、与信額がオーバーするのであれば、他の金融機関に相談してみましょう。
他の金融機関で融資が断られている
メイン銀行とサブ銀行の両方から融資を受けている場合、メイン銀行から融資を断られると、サブ銀行の融資がストップすることがあります。事業をメインに支えている銀行の融資が止まると、何かあったのではないかと疑義が生じ融資に対して後ろ向きの対応となってしまいます。
サブ銀行から融資を断られた場合はどうなるでしょうか。この場合、メイン銀行のスタンスによっては融資がストップする可能性があります。メイン銀行をどこにするか、評判などを慎重に分析しながら検討しないといけません。
前回の融資から一定期間が経過していない
最後に借入れをした時から一定期間、おおよそ6ヶ月~1年以上の期間が経過していない場合には、融資は難しい傾向にあります。申し込みをした期の決算が出ていない場合も厳しい可能性があります。金融機関の融資には、借り入れの際に「元金据置制度」という制度がありますが、これを利用した場合には、その間は利息のみ支払いのため返済実績があるとは見られません。したがって、前回から1年以内の借り入れの場合は、業績向上や借入する理由が明確にないと、借り入れは難しくなります。
融資を断られてから日が浅い
融資を申し込みして断られた場合、その直後に融資の申し込みをしたとしても上手くいきません。融資が断られた原因を突き止め、その原因を改善しない限り、融資を受けることはできないでしょう。
リスケをしている
リスケとは「返済スケジュールを変更すること」、つまり、事業が上手くいかず融資の返済額を減額することです。リスケをしているということは、融資を受ける際に金融機関と約束した返済額が支払えなかったことを意味するので、当然ながら追加融資を受けることはできません。まずは当初に約束した通りの返済額に戻して正常返済ができることを目指しましょう。
まとめ
コロナ禍を経て金融機関の貸出姿勢は慎重になってきています。融資を断られる、減額されることも起きてしまうこともあります。今回紹介した内容をチェックして判断してみましょう。もし、ご自身でわからなければ専門家に相談することをお勧めします。