解体業での開業の資金調達方法
現在、空き家や築年数が50年を超える家屋が増えてきており、老朽化による家屋解体に対する解体業の需要が増えてきております。では独立して解体工事を行う会社を設立したいと思った時にはどんな資格や手続きが必要で、どれくらいの資金を用意しなければならないのでしょうか?
今回は、解体業での開業についてや資金調達方法をご紹介していきます。
※この記事を書いている「資金調達のミカタ」を運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
解体業とは?
解体業とは、建築物やそれに付随する考察物の全部または一部を解体する建設工事の一種です。古くなった建物を取り壊すことはすべて解体業に該当します。解体業には専門の知識や経験が必須です。間違った方法で解体をすると周辺環境に悪影響や危険を及ぼす可能性があります。
解体業を営むには、元請・下請や金額に関わらず、必ず「建設業許可」という許可を受けるか「解体工事登録」という登録を受ける決まりがあります。建設業許可は建築業法により定められていますが、平成28年に改正建設業法が施行されたことにより、許可業種区分が変更されました。
解体業開業での必要な許可とは?
解体工事を請け負う事業者として解体業を営むには、「解体工事登録」という登録を行うか、「建設業許可」という許可を得る必要があると法律で定められています。これは、元請け事業者となるか下請け事業者となるかにかかわらず必要です。
解体工事登録は建設リサイクル法で定められた「解体工事を行うために必要な登録制度」です。都道府県知事に登録申請を行うもので、事業を営む地域ごとに登録が必要であり、5年ごとに更新しなければなりません。また、この登録を行っていても、請け負えるのは請負金額が500万円未満の工事に限られます。
建設業許可は、建設業法で定められた「建設工事を請け負うための許可」で、全部で29種類あります。29種類の許可の中には、建物を建てるための許可や造園工事をするための許可、そして解体工事をするための「解体工事業の許可」などがあります。許可を得ていれば日本全国で工事を行うことができ、請負金額の上限もありません。しかし、許可を受けるためには事業者の技術管理者や提出書類などで一定の条件を満たす必要があり、その条件は解体工事登録に比べて厳しいものになっています。
もう1つ考慮しておくべきものが産業廃棄物収集運搬業許可です。解体工事ではたくさんの産業廃棄物が生じますので、それらを処理施設に運搬する必要があります。そのためには、自治体から産業廃棄物収集運搬業許可を得る必要があるのです。この許可がない場合、産業廃棄物の運搬はほかの事業者に委託することになります。
建設業許可・解体工事業登録を受けるための要件
ここで建設業許可・解体工事業登録を受けるためには何が必要なのか、それぞれ説明します。
建設業許可
- 経営業務の管理責任者としての経験があること
- 専任技術者が営業所ごとに常勤していること
- 請負契約に関して誠実性があること
- 営業するための十分な資金があること
- 欠格要件に該当しないこと
解体工事業登録
- 基準を満たす技術管理者がいること
- 不適格要件に該当しないこと
以上のように、建設業許可を得ようとする場合、多くの要件を満たしていなければなりません。特に、解体工事の経験が豊富にあっても、経営業務はしてこなかったという方も多いでしょう。
そのため、まずは解体工事業登録をして会社を立ち上げ、経営も軌道に乗り、もっと大きな会社にして、もっと大きな仕事をしようという段階になったときに、建設業許可の取得を視野に入れるのが現実的でしょう。
解体工事業登録を受けるための要件について
それでは次に、解体工事業登録の申請に必要なものを見ていきましょう。
解体工事業登録は、営業所(事務所)を置く地域だけでなく、工事を行う地域を管轄している都道府県、それぞれで申請する必要があります。例えば、工事を東京と千葉で行いたいなら、東京都知事と千葉県知事の登録を受けねばなりません。
また、解体工事業登録には「基準を満たす技術管理者がいること」という要件がありましたね。以下で「技術管理者」になり得る要件について見てみましょう。
① 以下のいずれかの解体工事に関する実務経験がある
- 大学、高等専門学校において土木工学等に関する学科を修了した方
- 実務経験年数:2年以上
- 国土交通大臣の登録を受けた講習を受講した場合の実務経験年数:1年以上
- 高等学校、中高一貫校において土木工学等に関する学科を修了した方
- 実務経験年数:4年以上
- 国土交通大臣の登録を受けた講習を受講した場合の実務経験年数:3年以上
- 上記以外の方
- 実務経験年数:8年以上
- 国土交通大臣の登録を受けた講習を受講した場合の実務経験年数:7年以上
※土木工学科等とは、土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地または造園に関する学科を含む)、都市工学、衛生工学、交通工学、建築学に関する学科のことです。
② 以下のいずれかの資格を持っている
建設業法による技術検定
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(「第1種」または「第2種」に限る)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(「土木」に限る)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(「建築」または「躯体」に限る)
建築士法による建築士
- 1級建築士
- 2級建築士
技術士法による第二次試験
- 技術士(「建設部門」)
職業能力開発促進法による技能検定
- 1級とび・とび工
- 2級とび+解体工事実務経験1年
- 2級とび工+解体工事実務経験1年
国土交通大臣の登録を受けた試験
- 国土交通大臣の登録を受けた試験に合格した者
「国土交通大臣の登録を受けた試験」は、講習と同じく、全国解体工事業団体連合会が実施している「解体工事施工技士試験」ですが、受験資格として①と同程度の学歴や実務経験が必要です。
しかしながら、土木工学などの建築に関わる学科以外の大学や高等学校を卒業している人でも、解体工事の実務経験が一定程度あれば受験できるため、例えば「普通科の高校を卒業して、その後は解体業者で5年半以上働いていた」という場合、この試験に合格できれば、実務経験を8年間積むよりも早く技術管理者となれる可能性があります。受験料はインターネット申込で16,200円となっています。
①、②の要件のいずれかを満たしており、不適格要件に該当していなければ、技術管理者と認められます。
不適格要件について
- 登録申請書および添付書類に虚偽の記載があったり、重要な事実の記載がなかった場合
- 解体工事業の登録を取り消された日から2年を経過していない者
- 暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者 など
解体工事業登録の申請について
解体工事業登録の申請書類はたくさんあって複雑に感じますが、各都道府県のホームページで書類の記入例などが載っている手引が閲覧できるので、参考にしながら作成するとよいでしょう。インターネット上で「解体工事業登録 都道府県名」で検索すれば、手引に行き当たりやすくなります。
解体業開業での資格
上記の資格を満たして解体業を営むことができるようになっても、それですぐに解体工事を行えるというわけではありません。解体工事にはさまざまな工程がありますが、それぞれに資格が必要となる工程が多いです。
例えば、解体工事を行うにあたっては足場を組み立てることが多いですが、高さ5メートル以上の足場を組み立てるには「足場の組立て等作業主任者」という資格所有者が作業にあたる必要があります。解体工事で重機を使うためには、重機の種類に応じて「移動式クレーン運転士」「建設機械施工技士」などの資格が求められます。クレーンに物をかけたり外したりするには「玉掛作業者」という資格が必要です。
解体工事に伴ってアスベスト(石綿)の撤去・除去が必要となるケースもあります。その作業も自社で請け負うためには、「石綿作業主任者」の資格取得者を選任して法令を遵守することになります。このように、さまざまな解体工事を請け負うには、さまざまな作業に対応できる資格取得者が必要となるのです。
- 車両系建設機械(整地・運搬・積込および掘削)の運転
- 車両系建設機械(解体用)の運転
- 職長・安全衛生責任者教育
- 小型移動式クレーン運転技能講習
- ガス溶接技能講習
- 玉掛け技能講習
- コンクリート造の工作物の解体等作業主任者講習
- 特定化学物質等作業主任者技能講習
- 木造建築物の組立て等作業主任者講習
- 建築物等鉄骨の組み立て等作業主任者技能講習
- 足場の組立て等作業主任者技能講習
- 石綿作業主任者技能講習
解体業開業での必要手続き
一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをします。
解体業者を設立するために必要な費用
解体工事業を営むためにはどれくらいの費用が必要になるのでしょうか。会社設立のために必要な大まかな費用を以下でまとめてみました。
- 解体工事業登録:45,000円(東京都の場合)
- 会社設立費用(登録免許税等):250,000円程度(株式会社の場合)
- 印鑑(代表印 、角印、銀行印等):30,000円程度
- 名刺(100枚):500円~1500円
- ユニフォーム(社名入り):7,000円~10,000円程度
- ヘルメット:3,000円~6,000円程度
- パソコン:70,000円~120,000円程度
- プリンター(FAX、コピー、スキャナー付き) :50,000円~100,000円程度
- 固定電話(親機+子機1台):5,000円~10,000円程度
- 携帯電話(一括払いの場合):30,000円~50,000円程度
ここまでが最低限必要となると思われる費用ですが、合計で約50万円~60万円になります。そのほかにも事務所開設費用(購入または賃貸の場合)、社用車・備品・事務用品などの購入費用、営業のための費用、雑費が必要になるでしょう。また、資本金を用意したり社員を雇用したりするのであれば、その分の費用が上乗せされます。
そのため、新たに解体業者を設立するとなればどんなに少なく見積っても200~300万円以上の費用を準備しておく必要があるといえるでしょう。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、解体業での開業についてや資金調達方法をお知らせしました。
解体業を起業するには建設業許可か解体工事登録を受けることが必須です。その他行う仕事によって取得しなければいけない資格がありますので注意しましょう。まずは今の会社で働きながら、必要な資格は取ってしまい、少しずつ資金を貯めるなど、準備を始められるといいかもしれません。
◆『業種別』の資金調達方法についてはこちらでまとめていますのでご確認ください。◆