中古車販売業での開業の資金調達方法
国内の中古車販売市場は2010年から長期的な拡大傾向にあります。市場の拡大に伴い、これから中古車販売業を始めてみたいと考えている方も多くいらっしゃるでしょう。しかし、中古車販売業を開業する為には必要な手続きや開業時の商品の仕入れ、資金の調達などさまざまな準備に取り組む必要があります。
そこで今回は、中古車販売業で開業するための手続きや流れ、開業の際の資金調達方法を解説していきます。
「中古車販売業」開業に際しての許可・登録・手続き
中古車販売業を開業する際には、許可・登録や手続きを事前に済ませることが必要です。古物許可証さえ取得できれば販売店を開業することは可能ですが、仕入や売上の獲得手段を複数用意しておくことを考えるとすべての手続きを行っておくのが良いでしょう。
古物商許可の取得
中古車販売業を開業するには、「古物商許可」の取得が必須です。無許可で中古車販売業を開業した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されるので注意してください。古物商許可は開業エリアを管轄する警察署で手続きできます。個人・法人での許可申請で必要な書類が異なるので、事前にしっかり確認しておきましょう。
また、古物商許可の取得には、19,000円の手数料がかかります
自賠責保険の代理店登録
中古車販売業では、中古新規で販売車両を登録する際や、継続車検を受ける際など、自賠責保険への加入手続きが頻繁に登場します。もちろん、自店で取り扱う義務はありませんが、お客様からの信用を得ることや手続きの手数を考慮すると、自店で代理店登録をされることをお勧めします。なお、自賠責保険の代理店登録を行うためには、一般的に所定の研修と試験を受け、損害保険会社と代理店委託契約を締結する必要がありますが、新規に代理店契約を締結するには、保険会社ごとに定められた要件を満たす必要があります。
オートローンの代理店登録
取り扱う車種や価格帯にもよりますが、オートローンを活用して中古車を購入する一般ユーザーは数多く存在します。自店でオートローンを扱えない販売店では、お客様ご自身に、銀行などでローンを組んで頂く必要があり、審査や手続きに時間がかかるだけでなく、成約率の低下にも繋がります。商談中にその場で審査結果を出し、スムーズに契約を成立させることができるなど、オートローンの取り扱い代理店になることはメリットが大きいので、ぜひ検討しましょう。
オークション会員登録
中古車販売業に参入する場合、車両の仕入を行うルートを複数持っておくことが重要になります。車両仕入において重要になるのがオートオークションです。オートオークションの入会には実務実績が必要になる場合もあるため注意が必要です。
営業形態によって必要になる許可・登録、手続きは異なるため、開業前には細かく調べておくことをおすすめします。
「中古車販売業」の開業資金について
開業時にかかる初期費用
中古車販売業の開業に必要な開業資金は、業態や規模にもよりますが一般的に1,000~2,000万程度は必要です。主な費用としては、物件取得費や内外装費(設備費)、仕入費、広告宣伝費が挙げられます。いずれの費用も、店舗の形態や規模、立地などによって金額が大きく変わってくるため注意が必要です。
展示場タイプの中古車販売業を開業する際には、商品を販売するためのスペースが必要になります。中古車は陳列するだけでもスペースを取りますし、商品を整備するための設備や機材も必要になるので、「物件取得費」と「内外装費」だけでも1,000万円程度のコストがかかる場合もあります。
また、中古車販売業の開業では、商品をそろえるための「仕入れ費」が最も高いコストになります。仕入れ費の目安は1台あたり50~400万円程度で、10台程度の商品をそろえるだけでも1,000万円以上の資金が必要になる場合があります。
インターネット上で中古車を販売するネット販売型のビジネスを選べば、物件取得費や内外装費を大きく抑えられます。規模によっては数百万円程度で開業できますが、ネット販売型であっても集客活動は必要になるため、少なくとも20~100万円程度の広告宣伝費は用意しておくことが重要です。
開業後の運転資金
初期費用以外にも、開業後の運転資金も必要です。主な費用としては、人件費や賃貸料、仕入費、消耗品費・雑費、広告宣伝費などが挙げられます。いずれの費用も、店舗の立地や規模、集客状況によって金額が大きく異なります。
「人件費」と「賃貸料」は、店舗の規模によって変動するコストです。人件費は売上の10~15%、賃貸料は売上の10~20%程度が目安となるので、事業規模に合わせて資金計画を立てるようにしましょう。「仕入費」ですが、中古車販売店では開業後にも安定して仕入れをする必要があります。開業時と同じく、1台あたり50~400万円程度の仕入費用がかかってくるため、売上の60~70%程度の資金は仕入費用として毎月確保しておきたいところです。
そのほか、車両や店舗の維持に必要な「消耗品費・雑費」や、集客のための「広告宣伝費」も無視できないコストになります。いずれも毎月数十万円程度のコストですが、きちんと確保しておかないと客足が遠のくこともあるので注意しておきましょう。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
中古車販売業を開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけでは難しい所です。以下ご紹介する調達方法を組み合わせて検討することが良いかと思います。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3つの金融機関が統合して発足した政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能です。設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人にも積極的に融資を行うのが特徴です。
一般的な創業者に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は117万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は877万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下の小規模の事業者です。
創業者向け融資制度である「新規開業資金」は、営業実績が乏しいなどの問題を抱える、幅広い方の創業・スタートアップの資金調達を重点的に支援しています。
信用保証協会付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人をしてもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者でも民間金融機関から融資を受けるられる可能性が高くなります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの保証制度を設けています。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。金融機関による融資審査もあるので、金融機関と信用保証協会の双方の承諾が必要となります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、借入ではなくお金をもらう場合には、110万円を超える金額については贈与税の対象となります。
補助金の活用
融資以外の資金調達手段に国や都道府県などの自治体が行う補助金制度を活用することもできます。主に補助金は、政策の目的に合わせて行う設備投資の投資額に対して一定の割合が補助されます。開業時に活用できる補助金制度もありますので、常に情報を収集しておくことが重要です。ただし、補助金は原則後払いになります。そのため、一定の自己資金を用意する必要があります。
まとめ
開業資金については数千万円程度かかる場合もありますが、近年ではインターネットが普及し、ネット上で中古車を販売する方法もあります。また、注文を受けてから車を仕入れるという方法をとることもできるので、実際に在庫を抱えることがなく、安価で開業することも可能になっています。
また今回ご紹介した通り、中古車販売業を開始する場合には、許可や手続きが必要で、様々な届出もしなければいなりません。開業の前に、専門家に相談し、漏れの無いように申請しましょう。
