士業での開業の資金調達方法について
士業で開業する場合、自宅を事務所とし、最低限の準備で事業を行うのであれば、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できますが、多くの人を雇ったり、一等地の事務所を借りるなどをした場合、自己資金以外で資金調達をする場合があります。
そこで今回は、士業での開業の資金調達方法についてご紹介していきます。
そもそも士業とは?
士業とは、専門的な資格が必要な職業の俗称です。広い意味で○○士と名のついた専門性と公益性が高い職業のことを指します。医師や看護師などの○○師と合わせて「士師業」と呼ばれる専門職です。
こうした広義の士業に対して、一般的に認知されているのは狭義の士業で、法律や会計に係る業を総称して指す場合が多いです。このうち、職務上、委任状によって住民票などの請求権が認められている主な士業を8士業といいます。8士業は国家資格で、一部独占業務がある点も共通しています。
8士業の主な業務
- 税理士:税務相談、税務代理、税務書類作成、税務訴訟の補佐、会計業務(記帳代行など)
- 司法書士:土地や家屋・法人登記の申請、民事訴訟の手続きなどに必要な書類の作成
- 行政書士:官公署などに提出する書類の作成、契約書の作成代理
- 土地家屋調査士:土地・家屋の調査や測量、不動産登記の代理
- 弁護士:法律にかかわる業務全般
- 弁理士:特許庁での手続き代行、意匠や商標の異議申し立て代行
- 社会保険労務士:社会保険手続き代行、年金相談、労務管理相談、労災や助成金の申請代行
- 海事代理士:船舶の登記や登録、船員法にかかわる手続き代行、海上交通にかかわる許認可代行
士業での開業資金について
どういう形で独立するかによって、必要な開業資金には大きく幅が出ます。たとえば自宅ではなく、賃貸などで外に事務所を構えれば当然開業に必要な資金は上がります。
他にも、開業時に準備しておきたいものは次のようなものがあります。
- パンフレット
- 名刺や開業挨拶状
- 看板(表札)
- 事務所備品(プリンター、パソコン、印鑑、机、応接セット、キャビネットなど)
- ホームページ(プロに依頼するか、自分で作るか)
これらも、こだわりだせば、どこまでもお金はかかります。名刺一つをとっても、印刷所に頼むか自分ですべて手作りしてしまうかで、金額に差が出ます。事務所の備品も高級なものを揃えれば、それだけ予算は上がります。逆に抑えようと思えば、いくらでも抑えられるわけです。
備品は、多少見た目は悪くても安く抑えようとすれば、組み立て式のものやアウトレット品でも構いません。自宅で開業するなら、自宅にすでにあるものを使い回しても良いでしょう。ただ士業は「信用」が重要な商売なので、「信用」を失わない程度の体裁は保つ必要があります。
自宅で開業すれば、100万もあれば十分です。たとえ何ヶ月か無収入が続いたとしてもやっていけます。対して、賃貸の事務所で独立した場合は結構なお金が発生します。100万で独立はできても、無収入の月が発生した場合、持ちこたえるのは相当苦しくなります。また人を雇えば給料以外にも保険などの費用が発生します。
「これだけあれば十分」「これだけじゃ独立なんて無理」という明確な基準はないのが実際のところです。独立開業資金の額に、正解はありません。士業の場合、報酬が後払いになるケースも非常に多いので、最低でも「独立してから3~6ヶ月は無収入でも大丈夫」というくらいの資金を用意してから独立した方が安心です。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
ここからは、開業時の主な資金調達先をご紹介します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、士業での開業の資金調達方法をご紹介しました。
新規で顧客を抱えようとすると売り上げを上げるまでに時間が必要になります。これまでに身につけた人脈を生かして、常に仕事を確保できる状態にしておく必要になってきます。
出来るだけ自己資金で出来る範囲で開業した方が賢明ですが、士業は見栄えも重要になります。開業時に資金調達が必要な場合には、上記を参考にしてみて下さい。