有料老人ホームでの開業の資金調達方法
長寿大国である日本は、近い将来、「4人に1人が老人である」という高齢化社会を迎える事になります。一方、生活は高齢者にとって厳しく、付け加えて高齢者の孤独死なども起こっているのが現状である事は見逃せない課題でもあります。
今回は、有料老人ホームでの開業についてや開業に際しての資金調達方法をお知らせします
老人ホームの定義
有料老人ホームとは、介護サービスや生活援助、日々の健康管理など、入居者の心身の状態に応じてサービスを提供している居住施設のことです。有料老人ホームを運営するには、一定の基準を満たしたうえで、都道府県に届け出さえすれば自由に開設することができます。2006年4月の老人福祉法の改正によって、それまでの人員基準が撤廃されたため、有料老人ホームに当てはまらなかった小規模な施設からの申請が相次ぎ、一気にその数を増やしました。
入居条件は60歳以上、もしくは65歳以上と規定している施設が多く、夫婦で入居の場合はどちらか一方だけでも条件に当てはまっていれば入居可というケースがほとんどです。また入居者の希望や生活状況などに合わせて種類が分かれているのも特徴です。活動に見合うだけの基準を満たし、都道府県への届けを出して認定を受ければ、老人ホームの活動がスタートします。
住居型有料老人ホーム
住居型優良老人ホームは食事、掃除、洗濯など普段の生活におけるサポートを受けられるのが特徴です。介護は訪問介護施設やデイケアサービスなどを施設内に組み込むか、経営者が関連企業と提携するなどの準備が大切です。部屋が一般の住宅と変わらない構造なので、普段の生活と同じように過ごせることを入居者にアピールできるでしょう。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、食事や生活面での介護など、幅広いサポートを受けられる老人ホームです。食事や洗濯などの基本的な生活支援に加え、お風呂やトイレ、機能訓練などの身体的な介護もサービスに入ります。サークル活動やレクリエーションなどを行う施設も多数です。
介護付有料老人ホームは、都道府県から介護保険制度における「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていることが条件です。形式も要介護認定が入居条件の「介護専用」と自立生活可能な人も含む「混合型」に分かれます。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、身の回りにおける多くのことを一人で行える高齢者を対象とした老人ホームです。ただしこちらでも食事などの生活支援サービスを設ける必要があります。
一方で要介護認定などを受けると、退去の必要が出ます。経営者にとっては病気や障害に見舞われた高齢者の転居ルートを確保するために、他の介護付き老人ホームとの提携も考える必要があるでしょう。
老人ホームを設立する流れ
老人ホーム設立には、市区町村や都道府県への相談から始まり、必要な申請書類を提出するなどの大切なプロセスがあります。人員確保などの開業準備も必要で、土地や施設、設備などの購入費も調達しなければいけません。
ここでは、高齢者施設を作る主な流れを紹介しますので、これから設立を考えている方はひとつひとつを慎重にチェックしていただきたいと思います。
老人ホーム設立の流れ
老人ホーム設立では、市区町村や都道府県への事前相談から始まります。高齢者が安全に暮らすための建物を作るだけでなく、そのための土地の取得も必要です。今後のスムーズな流れを考えると、、各種許認可権を持つ都道府県や市区町村との関係は密にしておいた方がいいでしょう。
事前相談をクリアしたら開業準備に入ります。人員や設備を確保するかたわら、申請書類などの事務手続きも手を抜けません。有料高齢者施設を設立するまでの大切な手順を、3つのステップに分けて解説します。
市区町村や都道府県への事前相談
ある程度老人ホームの設立プランが決まったら、まず市区町村や都道府県の担当課に、施設を作りたいという事前相談を行います。担当課との協議を進めつつ、都道府県ごとに決まっている指針に基づき、新しい老人ホーム作りを任せるにふさわしいかなどの審査が進みます。
開業や人員の確保などの準備
審査に合格したら、老人ホーム経営母体となる法人を設立します。高齢者を受け入れる部屋などの設備や備品調達だけでなく、介護職員やケアマネージャーなどの従業員も雇用しなければなりません。設備費用や人件費などは国からの補助金、銀行からの融資などでまかなうことが一般的です。しかし全て融資や補助金でまかない、自己資金がゼロで進めることは難しいようです。
申請書類の提出
各都道府県、政令指定都市、中核都市などといった属する自治体による「有料老人ホーム設置や運営に関係するルール」に基づいて、行政との事前協議を行います。協議が終わったら施設の設置届を提出します。正式受理されると、建築工事の着工に取り掛かかることができます。
新設予定の老人ホームが介護付きの場合、開設まで1カ月を切る前に「指定特定施設入居者生活介護申請」が必要なので、忘れないように気をつけましょう。
老人ホームの開業と運営にかかる費用
どのような老人ホームを開業するかによって、開業費用は大きく変わりますが、いずれにしてもバリアフリーの建物が必須です。そのため、高額な費用を用意しなくてはいけません。
一般的には有料老人ホームを開業するのに、少なくとも1,000万、大規模になると数億円はかかると言われています。サービス付高齢者向け住宅の場合は、国からの補助金を利用できますが、それ以外は自分で資金を集めることになります。
さらに、運営をしていく上で人件費などもかかります。開業していきなり安定収入を得られる老人ホームはありません。最初の3ヶ月は収入が見込めないことも加味して、多く資金が必要になります。
- 人件費
- 共用施設の維持費
- 食費
- 水道光熱費
- 管理費
上記の費用を入居一時金や月額利用料金でまかなわなければいけません。支出の60%は人件費です。老人ホームの種類によっては、24時間体制で専門の職員が常駐するため、多額の費用がかかります。上記の項目をしっかりと計算した上で、月額利用料金や入居一時金の設定を行いましょう。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
まとめ
冒頭でもお伝えしましたが、日本は、近い将来、「4人に1人が老人である」という高齢化社会を迎える事になりますが、生活は高齢者にとって厳しく、付け加えて高齢者の孤独死なども起こっているのが現状である事は見逃せません。そのような社会状況から老人ホームは大変ニーズのある業種です。
開業に当たって、条件が多い事と物件取得費や施工や什器など費用が大きくかかるため、大がかりな組織作りが必要になり、民間の事業となるため、建設に補助金などの公的な支援はないと考えた方が良いでしょう。