料理教室での開業の資金調達方法
料理教室は、女性や個人で開業する教室として非常に人気の高い分野です。実際に料理教室で講師をしているという方の中にも、いずれは独立して自分の教室を持ちたいと考えているような方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、料理教室での開業についてや資金調達方法をご紹介します。
料理教室の開業には資格は必要?
料理教室を開業する際に必ず取得しなければいけない資格というものはありません。そういった意味でも、料理が得意な人にとっても料理教室は比較的始めやすい職種です。
開業する為の資格は必要ありませんが、「教室の格をあげたい」「安心感を与えたい」などの理由から、いくつかの資格を取得しておきたいと考える人もいらっしゃるでしょう。当然資格を持っていることによって、料理の説明にも説得力が増したり、食材についての知識を増やして生徒に伝えることができます。料理の資格は意外とたくさんあり、その全てを取得することは難しいことでもあります。その中でも取得しておくと良いのは野菜ソムリエや食育インストラクター、漢方コーディネーターなどといった資格です。これらの資格はただ美味しい料理を作るだけでなく、美容に気を配ったり健康な体を作るための料理を作ることと繋がっているので、食のプロとしては是非取得しておきたいところです。
料理教室の開業の手続き
個人事業主として料理教室を行う場合、一般的な手続きとして、個人事業の場合、個人事業の開廃業等届出書、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書、青色申告承認申請書等を納税地の所轄税務署へ提出します。また、個人事業開始申告書は事業所所在地の都道府県税事務所へ。詳しくは、最寄りの管轄行政に問い合わせが必要です。
法人として会社を設立する場合、定款作成、会社登記をし、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、法人設立届出書(地方税)などを提出します。
製造と販売を行うような場合には届け出が必要となるので注意しましょう。例えば、お菓子を販売する時には食品衛生責任者証と菓子製造業営業許可証の2つは最低限必要となります。物によっては他にも必要となる許可証があるとされる場合もあるので、自分が販売したいものにはどんな許可証が必要かをきちんと調べてから開業することが基本となります。
許可証を取得せずに販売を行った時には、食品衛生法違反に問われてしまいます。食事は場合によっては人の体に害を及ぼし、食中毒などを引き起こす恐れもあります。だからこそ、製造や販売をするような営業方法の場合は許可証が必要となり、安全面により注意が必要とされるのです。
料理教室で作ったものを販売するのはいけない!?
製造や販売をする飲食店の営業に許可証が必要なことからもわかるように、料理教室という名目を使って料理の作り方を教えるのと同時に製造や販売を行うことは禁止されています。その為、料理教室を開業したら本来の目的である料理を教えるということ以外を行ってはいけません。
販売することはもちろん、できたものを生徒が持ち帰って家で食べるといったことも禁止事項に含まれています。作ったものは必ず料理教室の時間内にその場で食べてもらってください。
レッスンの価格の相場
続いては、料理教室のレッスン価格についてご紹介していきます。レッスンの提供形態によっても価格が変わってきますので、以下を参考にしてみてください。
クラス制であれば1回あたり3,000円~5,000円が相場
一度に4~5人に対してレッスンを行うのであれば、1回あたりの料金は3,000円から5,000円ほど。ここに食材の料金を足して金額を決定するパターンが多いようです。スタジオを借りても経費が50%ほどで収まるように計算しておくとよいでしょう。
マンツーマンレッスンであれば1回あたり12,000円~15,000円程度が相場
マンツーマンレッスンの場合、時間あたりで対応できる生徒数が少ないため、1回のレッスン料金はクラス制の2倍~3倍程度が相場になっています。マンツーマンの場合はそこまで広いスペースは必要ないため、自宅でレッスンを行う方が多いようです。
月謝制の場合7,000円~10,000円程度が相場
レッスンごとではなく、月に〇回、という形で月謝制を採る場合もあるでしょう。参加回数に関わらず安定してお金が入ってくるため、生活の基盤としたい場合にぴったりです。この場合、レッスン1回あたりの料金がクラス制の50%ほどになるような料金設定にしておくことが多いようです。
料理教室用の物件選びの留意点
大掛かりな店舗用テナントではなく、広めの居住用物件を借りて教室を運営したいという人も多いでしょう。ある程度機能的なキッチンを備えた物件であれば料理教室を開くことは難しくありませんが、居住用に用意されている場合、そもそも人の出入りが頻繁な「店舗」としての利用を禁じている物件もあります。最初は特に何も言われなかったけれど、軌道に乗って人の出入りが増えてから営業禁止…といったことにもなりかねないので、店舗としての利用が可能かは事前に確認しておきましょう。
また料理教室を運営する場合、通常の店舗や住居に比べて強い匂いを発する機会が多くなります。十分な換気機能を備えていない物件を選んでしまうと、前回のレッスンの匂いが残ってたり、内装に匂いが染みついてしまう可能性もあります。飲食店用のテナントなどを参考に、換気機能を備えていることを確認しておきましょう。
そしてせっかく専用の物件を構えるのであれば、それ自体にも集客効果を持たせたいものです。ある程度大通りから見える位置にある物件であれば、看板を出したりオープンキャンペーン用の旗を立てておくなどをすることで、通りかかった人の興味を引くことができます。
料理教室の開業タイプ
自宅
自宅を教室とするタイプです。テナント代が不要で、自宅を使用しているため、基本的に受講者は少人数となり細やかなサービスを提供しやすいです。受講者の満足度が高まることで、口コミやリピート受講なども期待できます。
デメリットは、部屋の規模などから生徒数に限りが出てしまう点と、立地によっては利便性に問題が出てくる点です。また、受講生のマナーが元で近隣トラブルが発生しないとも限らないので、その点も注意をする必要があります。
キッチンスタジオをレンタル
レッスンの頻度がそこまで多くないのであれば、都度キッチンスタジオをレンタルするという方法もあります。こちらも自宅での開業と同じく初期費用を抑えることができ、さらにセキュリティ面での不安もありません。内装もおしゃれなスタジオが多く、生徒の満足度も高くできるでしょう。教室として使えるレベルのキッチンであれば、1時間あたり5,000円ほどで借りることができます。場所や広さによっては,1000円程度で借りられる場所もあるようです。
デメリットとしては、都度予約していく必要があるため毎回同じスタジオを使えるわけではないという点、レッスンの回数が増えるほどコストが増していく点などが挙げられます。
テナント
本格的な教室を開業するのであればテナントを借りるのが一般的です。それなりの資金を用意する必要はありますが、生徒数が多くなってきても対応することができ、内装や調理器具にこだわることもできます。店舗用のテナントであれば、安いところで家賃は30万程度です。1レッスンが2時間程度だとして、月に30レッスン以上行うような場合であればスタジオを借りるよりも費用を抑えることができます。
生徒は主婦やOLなどが中心であるため、通勤の乗換え地点など、交通に便利な所や女性の集まるショッピングセンターなどが好立地になります。自分の生活の軸として腰を据えて収益を上げたいという場合であればテナントを借りて教室を運営することをおおすすめします。
開業場所ごとの必要資金の目安
自宅
自宅で開業する場合、ある程度キッチンに広さがあるのであればそこまでの初期費用は不要です。集める生徒も近しい友人などになるかと思いますので、広告宣伝の費用も掛からないケースがほとんどです。
もし生徒用の調理器具を教室側で用意する場合は、10万円ほど用意しておくとよいでしょう。ただし、最低でも2名が入れるキッチンや作った料理を食べるスペースを考えると一人暮らし用の家だと少々厳しく、最低でも1LDK程度の間取りは必要です。自宅での開業を考えている場合は、十分なスペースを確保できているのかを考え、場合によっては引っ越しなども検討する必要があります。
キッチンスタジオをレンタル
キッチンスタジオを借りる場合も、自宅で開業する場合と同じく初期費用はそこまでかかりませんが、スタジオのレンタル代を支払うことを考えると生徒を集める工夫はしておく必要があります。この場合は調理器具も基本的には生徒側に用意してもらうことになるでしょう。
1レッスンあたりにかかる施設のレンタル費用はだいたい1万円ほどですので、開催したいレッスンの回数×1万円程度は最低でも用意しておいた方が良いでしょう。
テナント
テナントを借りて料理教室を運営する場合、最低でも300万円以上は必要になると考えておいた方が良いでしょう。内訳としては物件契約の初期費用が大半を占めます。教室運営に使用できるテナントとなると安くとも家賃は20万から30万程度かかり、居住用の物件と違い6か月分ほどの家賃を先に納入する必要があります。それに加え内装費用や備品の購入、HPの制作費用やチラシの印刷代などもかかってきます。
集客や利便性を求めて駅の近くや商業施設のなかにテナントを借りて運営する場合は、家賃が100万以上ということも多く、さらに多額の費用が掛かるでしょう。
開業資金をどこから調達すればいいのか?
開業するにあたり、自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。
創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。
信用保証付の融資
「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。
手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。
親族、友人・知人からの借入
親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。
その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。
オンライン料理教室も検討しよう!
コロナ禍で各サービスがオンライン化していく中、「オンライン料理教室」が普及しています。お家時間を有意義に過ごしたい方におすすめです。
オンライン料理教室には大きく分けて2種類あります。1つはZoomやSkypeなどを使ってリアルタイムの授業に参加するもの。先生はもちろん生徒それぞれの表情が分かるので、実際の料理教室さながらの雰囲気が魅力です。もう一つはレシピ動画を送ってもらってそれを見ながら調理するもの。これだと自分の都合のいい時間に作れる上何度も視聴できるというメリットがあります。
動画にアップするスキルや表現方法など、難しい点はありますが、チャレンジしてみるのもありです。
まとめ
料理教室は場所を確保して開業届さえ提出すれば誰でも始めることが可能なので、手続きとしては意外と簡単だと言えます。自分の技術を広めたい、料理ができる主婦を増やしたいとお考えの方、是非、この機会に開業届だけで気軽に開業することができる、料理教室を始めてみてはいかがでしょうか。