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運送業での開業について~必要資格や開業資金・資金調達先など~


トラックを運転する人なら、いつかは独立したいという人は多いのではないでしょうか。実際に独立して少しずつトラックの台数を増やしながら大きな運送会社を作った人もいます。しかし開業するということは、手続きや資格、資金面の調達など、行うことが沢山あります。

今回は、運送業で開業にかかる資金や必要な資格、開業までの流れなどについて解説していきます。

運送業の現状

近年のネット通販市場の拡大に加え、フリマアプリによる個人間取引も増え宅配便の取扱個数が急増しています。このようなネット通販による需要の高まりが、運送業界の新たな牽引役となっています。ネット通販市場は今後も成長が期待され、宅配便需要は今後も伸びると予想されます。

ネット通販市場が拡大する一方、ドライバーや荷物を取り扱う作業員不足は深刻化しており、運賃の値上げやドライバーの労働環境改善等が進んでいます。こうした背景もあって、運送業界では同業他社や異業種間での業務提携が活発になり、業務効率化や省人化が進んでいます。

運送業で必要な資格は「運行管理者」と「整備管理者」

運送業を開業するのに必要な資格には、「運行管理者」というものがあります。この資格を持った人がいなければ、運送業を営業することはできません。必要な運行管理者の人数は、トラックの台数に応じて変わります。29台までなら1人、30台~59台なら2人という具合に、30台ごとに1人が必要です。運行管理者は、3日間の講習を受け、試験に合格すれば取得できます。もしくは、5年以上の実務経験を積み、その間に5回以上の講習を受けることでも取得可能です。

もうひとつ必要な資格が、「整備管理者」です。最低1人は必要ですが、こちらはトラックの台数に関係なく、営業所ごとに1人選任します。整備管理者には、自動車整備士3級以上の資格が必要です。もしくは、2年以上の実務経験があり、整備管理者専任前研修を受けた人も、選任することができます。また、「運行管理者」と「整備管理者」は兼任することが可能です。

Gマークについて

貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク)は、公益社団法人全日本トラック協会がトラック運送事業者の交通安全対策などの取組を評価し、利用者が安全性の高い事業者を選定しやすくするとともに、事業者全体の安全性の向上に対する意識を高めるための環境整備として実施している制度です。Gマークの認定により、利用者の増加が見込めるだけでなく、国土交通省や全日本トラック協会、損害保険会社から優遇措置を受けることができます。

運送業開業までの流れ

必要な条件がそろったら、運送業の開業に向けて営業許可の申請をしていきましょう。以下申請など開業までの流れになります。

  • ①許可申請書の提出
  • ②法令試験
  • ③登録免許税の納付
  • ④許可証の交付式・選任届を提出
  • ⑤連絡書の交付式・緑ナンバーを取得
  • ⑥運輸開始届の提出

それぞれについて説明していきます。

①許可申請書の提出

各地域の運輸局に運送業許可申請書をはじめ、事業計画書、残高証明書、戸籍抄本、営業に使用する車両のナンバーなどの書類を提出します。

②法令試験

申請が受理された後、法令試験を受験します。試験の後、簡単な面接があります。隔月で実施される場合が多く、2回連続で不合格になると、申請が取り消されてしまいますので注意してください。

③登録免許税の納付

法令試験に合格すると合格通知とともに登録免許税の納付書が届きますので、これを支払います。

④許可証の交付式・選任届を提出

交付式で許可証を受け取ったら、運行管理者などを記入した「選任届」を提出しましょう。

⑤連絡書の交付式・緑ナンバーを取得

事業用自動車等連絡書が交付されます。これは車両の事業用ナンバー、いわゆる「緑ナンバー」を取得する際の車庫証明にあたりますので、別に車庫証明をとる必要はありません。

⑥運輸開始届の提出

営業をはじめるための運輸開始届、保険加入証明書の写し、車検証の写し、運賃料金設定業などを提出すれば、いよいよ営業開始です。

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運送業の開業方法について

運送業を開業するには、個人事業として開業するか、法人格を取得して開業する方法があります。

個人開業

個人で開業する場合は法人格を取得する分の費用がかからないので、開業資金を抑えられるというメリットがあります。ただ、もしも途中で法人化する場合には、書面上は会社が変わる形になります。そうなると、運送業許可の譲渡や譲渡認可などの手続きや法令試験を受け直す必要など、余計な手間がかかることになるので注意しましょう。

法人開業

法人格を取得して開業する場合、その規模が多いことから社会的信用が高くなると考えられます。また、銀行などからの融資が受けやすくなる可能性があります。デメリットとしては、法人格の登記費用が約16万円~20万円(株式会社の場合)ほどかかってくる点が挙げられるでしょう。

フランチャイズ開業

もうひとつ、個人で開業する形にはなりますが、フランチャイズに加盟して開業するという方法もあります。フランチャイズに加盟することで、大元であるフランチャイズ本部の信用をかりて融資が受けやすくなる場合があります。物件探しなど、開業時のサポートもしてくれるのです。

また、開業前に運転マナーなどの研修をおこなってくれたり、営業に使う車両のリースやレンタルを実施しているところもあるようです。まずは個人から始めてみたいという人は、フランチャイズで開業してみるのもおすすめです。

開業資金について

運送業の開業には、どれくらいの資金がかかってくるのでしょうか。運送業の場合、当然ながら運送に使うトラックが必要です。この際、どれくらいのサイズのトラックをそろえるかによって、開業時の必要資金は変わってきます。トラックの年式や車種などによって差が出てくるので、購入時には注意しましょう。
 

◆開業資金の内訳
  • 車両費
  • 保険料
  • 自動車税
  • 車両設整備費用
  • 燃料費
  • 事務所、駐車場の取得費用
  • 事務所で使うイスや机などの備品費
  • 登録免許税
  • 人件費

登録免許税とは、運送業営業許可を取得するときにかかる税金のことで、約12万円程度かかります。その他、開業時に用意する車両や事務所の費用だけでなく、燃料費や人件費といった当面の運営にかかる運転資金も、はじめに用意しておかなくてはなりません。車両は最低5台必要です。初期費用を抑えたいのであれば、車両は中古のものを購入されることをおすすめします。まだまだ使えるような車両が、かなり割安に手に入る場合があるのです。

おおよそですが、運送業の開業には、600万円~2,000万円の費用がかかります。上記でもお知らせしましたが、その費用はトラックの大きさや中古・新車の違いによって大きく変わってきます。

開業資金をどこから調達すればいいのか?

運送業で開業する為には多額の費用が発生します。そのため、創業前に十分な資金調達ができるルートをあらかじめ確保したうえで、開発をスタートすることが重要です。自己資金、いわゆる貯金だけで開業できればいいですが、なかなか日々の生活費なども考えると難しい所です。では自己資金以外でどこから調達すればいいのでしょうか?

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、2008年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの金融機関が統合して発足した100%政府出資の政策金融機関です。全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。

一般的な中小企業に関係する事業は、国民生活事業になり、国民生活事業は事業資金の融資がメイン業務で、融資先数は88万先にのぼり、1先あたりの平均融資残高は698万円と小口融資が主体です。融資先の約9割が従業者9人以下であり、約半数が個人企業です。サラリーマンには馴染みではないですが、理由として、銀行のように口座はなく、貸付のみだからになります。

創業者向け融資制度である「新創業融資制度」や認定支援機関の助言があれば無担保・無保証、金利が安価になる「中小企業経営力強化資金」という融資制度がお勧めです。

信用保証付の融資

「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらい、民間の金融機関から融資を受ける制度です。貸倒のリスクを信用保証協会が背負うので、実績のない創業者が民間金融機関から融資を受けることが可能となります。万が一返済が不可能になった場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に返済し、その後債務者は、信用保証協会に借入金を返済することになります。信用保証協会は全国各地にあり、地域ごとに創業者向けの融資制度を設けています。また独自の融資制度を設けている自治体も多くあります。

手続きの手順としては、信用保証協会に保証の承諾を受け、金融機関から実際の融資を受けるという流れになります。また各自治体の制度を利用する場合は、自治体の窓口を経由することになります。

親族、友人・知人からの借入

親族・知人から借入をする際には、その人の好意でお金を借りることになります。先々トラブルにならないようにしっかりとした取り決めをおこなっておくことが重要です。いくら近い間柄とは言え、お金を貸す側の心理としては複雑なものです。また、後々トラブルになりやすい資金調達法でもあるため、甘えてしまわないよう入念な説明と借用書などを交わすなど、お互いが納得のいく取り決めをしっかりとしておきましょう。

その他注意点として、金額によっては贈与税を納めなくてはならないので、実施する場合は、贈与とみなされないよう書面(金銭消費貸借契約書など)を作成したほうが良いでしょう。また、利息など契約内容も明確にし、返済は銀行口座を通じたり、領収書をもらうなどして、証拠を残したほうが良いでしょう。

まとめ


運送業は、一般的に運転資金需要がさほど大きい産業ではないですが、典型的な労働集約型産業であり、経費の大半は人件費が占め、固定費の割合が高いです。また、経費は燃料費の価格動向に左右されやすいのも特徴です。

近年トラック運送業は、多頻度小口配送や時間指定配達の増加しており、こうした動きはコロナの影響により加速することも考えられ、輸送効率の改善が課題となっています。そのため、車両1台では輸送効率を上げることが難しいため、保有車両を予め一定台数以上確保したうえで開業することが望ましいです。その上で、実働率(延べ実働稼働車両数÷延べ実在車両数)、実車率(実車キロ÷総走行キロ)などを挙げていく取組が必要となります。大手業者では3PL(サードパーティロジスティック)などの業態があるが、中小でも同業者で共同配送を行うなどの取組により輸送効率を上げていく必要があります。

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